中学数学の学び直しで苦手意識を払拭し
学習の定着をめざして「数検」を活用

  • 高等学校
  • 日々輝学園さいたまキャンパス(埼玉県) 
    お話:佐藤 忠広教諭・高橋 康太教諭

学び直しの定着に導入した「数検」で、生徒の数学への興味が高まっていると実感

学び直しの定着に導入した「数検」で、生徒の数学への興味が高まっていると実感本校は、私立の広域通信制の高等学校です。7割近くの生徒が中学時代に不登校を経験しており、そうではない生徒も、思うように学習の定着が図れなかった傾向にあります。国語、数学、英語はとくに積み上げが必要な教科のため、本校では1年次に対面授業で学び直しを行っております。そのなかでも数学はどうしても苦手意識が強いようで、学び直しを重ねてもなかなか定着が図れませんでした。そこで、すでに力を入れて取り組んでいる英検(実用英語技能検定)を参考に、外部の試験をとおして目標を持たせる方法を検討し、数検を実施する運びとなりました。希望者のみの受検ですので、そこまで受検者数は多くありませんが、本校で独自に行っている「日々輝塾」を定期的に開催することで、少しずつ数学への興味関心が高まってきたと感じています。やはり目標を持つことでそれがモチベーションとなり、力をつけていくのだと思います。

また、数検の2次の特長である記述式の問題が、生徒の学習意欲や自信を削ぐことなく、前向きに取り組む姿勢を後押ししてくれていると感じています。たとえ解答が間違っていたとしても、解き方や考え方が合っている箇所には部分点として点数を付与されることが、成功体験につながっているようです。自分の考え方を評価してもらえたという経験が、次回への挑戦に結びつきやすい環境を作っているのだと思います。

この「日々輝塾」ですが、単位認定科目とは別に開講しています。日々輝塾は数学以外にも英語、情報を開講しており、いずれも検定取得に向けた特別講座です。日々輝塾の数学は、隔週の水曜日に開講しています。基本的に検定を受検する生徒が対象で、少人数講座なので、検定に向けた対策をじっくり行うことができます。

中学校の範囲を学び直すカリキュラムで「できる」を経験、自信につなげる

中学校の範囲を学び直すカリキュラムで「できる」を経験、自信につなげる通信制の場合、全日制とくらべ、カリキュラムを柔軟に組むことができるのが最大の利点です。高校1年では、本校独自の学校設定科目「ベーシック数学」を開講しており、数学Ⅰに接続できるように中学時代の数学の学び直しを行っています。数学に苦手意識のある生徒もこの学び直しを経て、「わかる、できる」を実感してもらい、自信につなげています。検定はまさにその腕試しにもなる取り組みで、生徒1人ひとりに目標を持ってもらい、その自信を確かなものにしてもらいたいと考えています。また検定に少しでも興味関心を持ってもらえるよう、合格した生徒たちを各学期の終業式や始業式で発表、表彰しています。新型コロナウイルス感染症拡大前は一堂に会して、その努力・合格という結果を全員で讃えることができていましたが、現在は表彰対象者だけを会場に呼び、ほかの生徒はオンラインで参加してもらう方式に変更しています。

教科「情報」と「数学」でともに深める「論理的思考」

教科「情報」と「数学」でともに深める「論理的思考」高校2・3年で選択できる「情報ビジネスコース」では、「Physon(パイソン)」などのプログラミング学習やインターネットなどを活用したカリキュラムを組んでいます。情報の教科に限らず、数学を他教科と関連させることは重要であると考えています。とくに、プログラミング学習をはじめとする情報の教科では、確かな数学を学んだ経験が必要であると考えています。また、数学とプログラミングを並行して学ぶことで、より深い学びになることが期待されます。その逆に、プログラミングを学ぶことが、数学の理解を深めることもあるだろうと考えています。

プログラミングを学ぶことの意義について、大きいものは「論理的な思考を育む」ことにあります。これは数学教育でも掲げているものであり、学習内容についても重なる部分があります。アルゴリズムを理解する能力、それにしたがってプログラミング言語で記述する能力は、数学を学ぶことで伸びていくものであると確信しています。

数学の文章題には、日常生活では使う頻度の少ない特有の言い回しや、表現が出てきます。とくに確率の問題などでは、その独特の表現に対し苦手意識が増幅するケースが見受けられます。そこで、表現の意味を伝え、理解を促しながら繰り返し学ばせることで、読解力が向上し、つまずき解消に繋がった事例もありました。

個々の成長を見届けることで、どの部分を壁と感じているのかを把握することができます。生徒と教師が協力して乗り越えていくことで、数検に合格することだけではなく、社会で生き抜く力を身につけられていることを実感しております。

本校では「1人ひとりを大切にする教育で それぞれの良さを伸ばし 進路希望を実現する」をスクールモットーにしています。検定は学校の目標ではなく、生徒1人ひとりのモチベーションと自信につながるような取り組みにしたいと考えています。その手助けとなるよう、私たち教職員も日々輝塾などをとおして、検定合格はもちろん生徒の成長につながるよう支援していきます。