数検で生徒の数学への興味・関心を高め、将来へつなげる

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  • 兵庫県立舞子高等学校(兵庫県) 
    お話:穂積 正人教諭

数検との出合い

数検との出合い数検との出合い今から遡ること30年あまりの平成5年(1993年)ごろ、わたしは兵庫県内の高校に勤めていました。商業高校ということもあって、生徒たちにあまり数学力があるとはいえない状況でしたので、何か興味・関心を持たせるために学校の授業以外の検定のようなものはないだろうかと模索していました。そのころ、新聞で日本数学検定協会が大阪に事務所を開いた記事を見つけ、すぐに電話したことを今でも覚えています。協会の担当者が来校され、説明を聞き、実用数学技能検定(以下、数検)をさっそく実施することにしました。幸いにも、商業高校では、簿記や情報の検定を日ごろから実施していたため、先生方や生徒たちの検定に対するハードルは低く、受検希望者を募ることができました。

その後、現在勤めている舞子高校に転勤になりました。転勤した当初は、数検を実施していませんでしたが、担任したクラスや授業担当のクラスから声がけを始め、翌年には、全校に広げて実施できるようになりました。数学科教諭、学級担任の協力を得て、ここまで長く数検と関われるとは考えていませんでした。

数学に興味を持ち、「数楽」として楽しんでもらいたい

数学に興味を持ち、「数楽」として楽しんでもらいたい生徒たちには数学に興味・関心をもってもらいたいので、校内の数学準備室の前に、数検の案内パンフレットとともに過去問題を掲示しています。手に取って「この問題であれば解ける」と感じてもらい、気軽に数検に挑戦してもらうことがねらいです。また、合格すれば合格証がもらえるので、それを糧に次のステップへ移ろうとする意欲を少しでも高めるため、オリジナルの申込書を作成して全員に配付しています。その申込書には、数検の大学入試優遇制度に関しての案内も載せています。数検に対する質問や内容には、数学科の全教員が対応できるようにしています。受検申込者には、過去問題に対する質問や難問に対応するための補習を行っています。本校では、数検を年間3回(6月、11月、2月)実施しています。

数検の1次は基礎的な問題が多く、基礎学力の確認・定着につながると感じています。それまで検定に興味のなかった生徒が半信半疑で3級を受検し、合格することで数学への興味・関心を高め、さらに上の階級を受けながら理数系の大学に合格していった事例も多々あります。

数検は、生徒1人ひとりの数学力を客観的な指標で絶対評価できるのがメリットです。さらに上の階級をめざす目標にもなり、準1級に挑戦し合格する生徒も現れています。
2次は、数学の教科書には出てこないような、パズル的な問題や音楽の問題など、さまざまな分野の問題が出題され、まさに生活のなかに数学が満ちあふれているかのように楽しく取り組める問題がたくさんあります。生徒に、こんなところにも数学があるんだと再認識させるのに、役立っています。

大学入試受験時に提出する調査書は、学校間の格差が大きく、調査書の成績だけでは生徒の本当の学力が評価できないと思います。とくに、総合型選抜や学校推薦型選抜においては、文部科学省の指導もあり、教科の試験を行う学校は多くはありません。そのため、検定の取得が選考の材料となることが多いと思われます。

進学にも自己アピールにも活用できる数検

進学にも自己アピールにも活用できる数検
近隣の大学で数検が活用されていることを、前述のオリジナルの申込書に記載して、受検の奨励につなげています。たとえば、兵庫県立大学環境人間学部において、2020年度までは推薦入試で、2021度からは学校推薦型選抜において、数検2級以上を取得していると加点されます。そのため、この大学の入学希望者は早い時期から数検を受検し、3年次までには2級に合格できるよう、日ごろの授業を大切にしてがんばっています。また、神戸学院大学では、取得している階級によって加点される制度があります。学部により加点内容は異なりますが、文系学部なら3級で10点、準2級で20点、2級で30点、理系学部なら2級で10点、準1級で20点を当日行われる2科目の基礎的な適性調査(計200点満点)に加算したうえで、合否を判断します。科目試験だけでは不合格でも、この検定による加点のおかげで合格できた生徒も多くいます。こうしたことが前例となり、多くの大学進学希望者が、早いうちから検定取得をめざしています。

また、大学進学に活用できるだけでなく、卒業後も一生の資格として、就職・アルバイト等の履歴書に記入できることを説明しています。

このように本校では、数検を導入することで、多くの生徒が数学への興味・関心を高め、進学や就職に活用しています。これからも、将来社会で活躍する人材を育てるためにも数検の活用を継続していきたいと思います。