「数検」の取得で基礎学力を
高め、
これからの情報社会で
活躍できる人材をめざす

  • 高等学校
  • 高松学園 伊那西高等学校(長野県) 
    お話:小林利拡教諭

数検を取得することで基礎学力を証明する

数検を取得することで基礎学力を証明する私は本校在籍20年めになります。新任のころ、数学検定(以下、数検)を校内で導入することになり、同時に私自身が担当を務めてから19年になります。女子校ということもあって、入学時に行う面接では数学が苦手と答える生徒がほぼ100%と、数学に対して苦手意識を持つ生徒が大多数を占めています。そのため、導入当初は受検する生徒がいないのではという懸念がありましたが、徐々に数学に興味を持ち、数検に挑戦してくれる生徒が増えてきました。数検準2級の出題範囲は数学Ⅰ・Aと、高校生にとって必修範囲であることから、合格することで基礎学力があることの証明にもなります。私のクラスも準2級は3分の2の生徒が取得していますので、今後も、数学Ⅰ・A履修後に確認として準2級取得をめざし、生徒の基礎学力を高めていきたいと考えています。

また現在、本校ではさまざまな検定取得が可能となり、それらを「JAPAN e-Portfolio」(運営:一般社団法人教育情報管理機構)と連携して、学びのデータとして蓄積できるようになりました。一例として、データ内に多くの資格・検定の合格履歴が登録されていることで、学ぶ意欲がとても高い生徒という証明になり、大学合格をつかみ取った生徒もいました。

本校が、生徒の学力向上を3年間継続させて結果をだしてきている背景には、資格・検定取得を推奨し学習意欲を高めていることはもちろんですが、授業におけるICT化も大きく関わっています。

ICTをフル活用し、これからの情報社会で活躍できる力をつける

ICTをフル活用し、これからの情報社会で活躍できる力をつける数学と情報の教員免許を取得し、両方の科目を指導していて感じることは、数学・情報がともに得意な生徒は、卒業後に社会で活躍する傾向にあるということです。情報を整理し、活用できるものがこれからの情報社会で活躍できる人材です。では、生徒にどのようにしてその力をつけさせるのか。それは、ICTをフル活用した授業を行うこと、そしてアクティブラーニングを取り入れることであると考えています。生徒たちはスマートフォンで板書や授業動画を撮影し、自宅に帰ってからの復習や、ノートの整理に役立てています。さらに、多種多様なテキストを自由に使用できるように電子テキストを導入し、生徒はスマートフォンやタブレット端末を教科書の代わりとして使用しています。電子テキストの利点として、使用したい教材、解説をピンポイントで提示できる点が挙げられます。テキストの解説だけでは足りない場合は、追加でくわしい解説を添付することもできるため、生徒たちはより深く学習することができます。また、私からも定期的に各問題の解説動画を提供することで、反復学習の定着や五感をフルに使った学習が可能となっています。生徒からも「動画を巻き戻して何回も授業を受けられるから、わからないままになることがない」ととても喜ばれます。なかには、解説動画を自宅で父親と一緒に視聴することで、父親が解説の補足をしてくれるといった事例もありました。自分の授業を生徒以外に見てもらえることもICTならではの強みですし、生徒の保護者からも「先生の教え方、うまいですね!」と言ってもらえたことは、たいへん励みになりました。

また、予習動画の視聴により、授業前にノートをある程度完成させ、一定の知識がある状態で授業を受けられるので、理解度に加えて応用問題の正答率も格段に上がりました。このような取り組みにより、授業時間に少し余裕ができるようになったので、その時間をアクティブラーニングの時間として活用し、お互いに学び合ったり教え合ったりできるよう改善しました。だんだんとこの取り組みが浸透するにつれて、休み時間なども生徒が黒板やノートを使って教え合っている姿があちらこちらで見られるようになっていきました。

数学も学校生活も楽しみながら成長してほしい

数学も学校生活も楽しみながら成長してほしい数学の授業は習熟度別で6つのグループに分け、扱う内容の深さを変えています。数学は、理解の積み重ねが重要ですので、生徒がつまずいているところまで戻り、1つひとつ確実に積み重ねていくことに重点を置いています。つまずきの原因を取り除いていくことで、数学が理解できずにやる気も起きず、学習することを諦めていた生徒たちが、理解できることの楽しさや達成感に後押しされ、さらに数学力向上に自ら向かえるよう工夫しています。数検の受検を勧めるのもその一環です。

本校に通う生徒は、みんなが学校生活を楽しんでいます。日々の生活が充実しているからこそ、学力も上がり、友人との関係もよくなり、成長できるのだと感じます。徐々に大学進学率も上がってきており、国公立大学や難関私立大学へ合格する生徒も現れるようになってきました。毎日の高校生活の成果として、進路実績や部活動での活躍があり、それこそが高校生活にとって大切なものであると信じています。これからの時代、自ら主体的に行動し、他者とのコミュニケーションをとおして、お互いに学び合い、成長できる力が不可欠となるはずです。それらの力を高校生のうちに身につけてほしいと考えています。