「子どもファースト」を
かかげて
地域一体となって
学力向上に取り組む

  • 地域ボランティア
  • ボランティア団体「釧路鳥取てらこや」(北海道) 
    お話:大越拓也代表

PTA主体で検定に取り組み、地域の子どもたちの学習をサポート

PTA主体で検定に取り組み、地域の子どもたちの学習をサポート私は、2010年に釧路市立鳥取小学校(以下、鳥取小学校)のPTA会長に選任されました。ある時、鳥取小学校の冬休みの補習で3年生の算数の授業を見学する機会がありました。問題がわからず手をあげている児童を見かけたので、先生の許可をもらいその児童の答案用紙を見せてもらったところ、1桁のくり上がりのたし算ができていないことに驚がくしました。当時の校長先生に「あの子の将来のために何とかしてください」と申しでましたが、「既定の時間では対応できないし、ほかにも問題を抱えている児童が多数いるので特別扱いできない」という回答でした。先生方の事情を考慮し、「それならば、子どもたちのために地域で学習のサポートをしよう!」と地域の方々に呼びかけて有志を募りました。そして、ボランティア団体「釧路鳥取てらこや」を2012年4月に立ち上げ、これまで子どもたちの学習支援を行ってきました。

2013年度には、文部科学省の外郭団体である「早寝早起き朝ごはん全国協議会」の土曜朝塾支援事業から支援を受けることになりました。その協議会のホームページを見ていたところ、「数学検定・算数検定」が目にとまり、「これはぜひやってみよう」と学校主体で検定を実施できないか鳥取小学校に相談しました。鳥取小学校の教室には余裕があるため、他校のPTAにも参加できる旨を打診したのですが、他校の一部の先生方からは、「前例がない」「検定対策の補習を実施してほしいと言われてもできない」など反対の声が上がりました。そこで先生方には負担をかけず、私たちだけで検定を実施することを条件に教室を使用する許可をもらい、PTA主体で算数検定に取り組むことを決意しました。そして2013年11月、釧路市内の全児童に呼びかけ、鳥取小学校の教室を借りて初めて算数検定を実施しました。地域の有志や釧路公立大学のボランティア部などの協力を得て、算数検定12級(幼児/現かず・かたち検定)~7級(小学校5年程度)までの事前講習を行い、検定当日は、51人の児童が算数検定にチャレンジしました。

小学校主体で検定を実施するのが難しいのであれば、PTAや地域主体で検定を活用し、地域の子どもたちの学習をサポートする方法があるということを広く知ってほしいと思います。

地域一体となって学力向上に取り組んだ成果が評価され「内閣総理大臣表彰」を受賞

地域一体となって学力向上に取り組んだ成果が評価され「内閣総理大臣表彰」を受賞北海道の児童の学力は全国最下位レベルであり、釧路市の児童の学力は、北海道全体の平均より下に位置しており、私たちは基礎学力の向上をめざしていました。それが驚いたことに、2018年度「全国学力・学習状況調査」で、鳥取小学校はどの教科も北海道平均どころか全国平均をも上回ったのです。「釧路鳥取てらこや」を軸として、鳥取小学校を会場に算数検定を実施して6年。長年にわたる地道な取り組みが成果となって表れた瞬間でした。さらに、地域が一体となって、子どもたちの学習のサポート、居場所づくりに取り組む姿勢が評価され、内閣府が主催する2018年度「子供と家族・若者応援団表彰」で「釧路鳥取てらこや」が内閣総理大臣表彰を受賞しました。子どもたちのために活動することがやがて地域のためになると考えて、「子どもファースト」をモットーに継続して取り組んできた結果が認められ、コミュニティスクールを牽引する地域のボランティア団体としての稀少性を評価いただいたのだと感じています。

私たちの地域だけにとどまらず、全国各地のPTAや地域支援本部・コミュニティスクールなど、地域が主体となって検定を活用している事例が増えてきています。学校と地域のつながりの希薄化を肌で感じるようになった時代だからこそ、地域が一体となって子どもたちを育むことで、次代を担う存在として、自分たちが育った思い入れのある地域を大切にしてくれると信じています。

これまでの成功事例やノウハウを広げてさらに実例を増やしていく

これまでの成功事例やノウハウを広げてさらに実例を増やしていく子どもたちの基礎学力が向上することで先生や保護者の意欲が高まり、学校全体の意識や学力の向上、ひいては地域全体が活性化するという流れが大きな形になりつつあることをひしひしと感じています。しかしながら、さらに大きな目標を掲げて、常に足を止めずに動いていくことが次につながると確信しています。 これまで、鳥取小学校では、希望者を募って実施していた算数検定を2020年2月には、授業の一環として、全児童が受検します。今後は、鳥取小学校での成功事例やノウハウを進学先の鳥取中学校に広めたいと考えています。市内において、小学校で全体的に学力が伸びてきているにも関わらず、進学先の中学校での「全国学力・学習状況調査」の結果が北海道平均以下に後退してしまうという、新たな課題が浮き彫りになったためです。まずは、これまでの積み重ねで培った学力を維持する解決策として、中学校へのコミュニティスクールの導入をめざして奮闘しています。先生方は部活動などの負担が大きいので、地域の力で先導し、実例を増やすことが有効だと考えています。

さらには、鳥取中学校を核として、学区内の釧路商業高等学校との連携を通じた取り組みも計画しています。専門性の高い高等学校のため、垣根を越えて小中学生が関わることができれば、彼らの将来に計り知れない好結果をもたらすのではないでしょうか。

このような私たちの取り組みが、今の子どもたちの心のよりどころとなり、あたたかい思い出として残ることを切に願います。そして常に楽しむ姿勢を忘れず、地域一体となって目標の実現に努めていきたいと思います。

釧路鳥取てらこやホームページ
https://kushirotottoriterakoya.jimdo.com/