ビジネス数学に挑戦!数字やデータを味方にするスキルを磨こう

数字やデータとうまくつきあうことは、ビジネスを進めるうえでの重要なスキルです。数字やデータの活用によって、より的確な意思決定が可能になり、ビジネスを成功に近づけることができます。本コラムでは、ビジネス数学の研修で使用している例題を用いて、数字やデータの扱い方を紹介します。時間に余裕のある人は、お手もとに電卓を用意して、一緒に考えてみてください。

【例題】ざっくりと数字をつかむ

つぎの例題について考えてください。

【例題】ある企業で行われた健康診断のデータが、上の表のようにまとめられています。このデータから「肥満」と診断されるのは何人かを割り出してください。ただし、肥満の判定には「BMI」を用い、BMIが25以上の人を肥満とします。(制限時間:30 秒)

30秒以内に正解できるのは約5%

正解は「1人」です。 この例題のポイントは「制限時間:30秒」 というところの計算そのものは電卓を使えば難しくありませんので、制限時間がなければ誰でも正解できる問題です。しかし、「30秒」という制限時間を設定すると、正解できる人の割合は約5%まで低下します(※過去にビジネス数学関連の研修を受講した人の実績値)。

正解できた5%の人は、つぎの2つのタイプに分かれます。

  • 経理部のベテランで、超高速で電卓をたたける方。
  • 数字やデータをうまく使えている方。

今からベテラン経理部員になるのは無理があるので、ここでは、後者がこの例題にどのようにアプローチするのかを紹介しましょう。

数字やデータをうまく使えている人のアプローチ

ビジネス数学関連の研修でこの例題を出したとき、いきなり電卓をたたき始める人の大半は、「30秒」という制限時間に間に合わないため正解できません。数字やデータをうまく使えている人は、いきなり計算せずに身長と体重のデータを見て「この人はどんな姿なのか」をイメージしています。たとえば、T 氏は身長が182cm、体重が52.3kgですが、この身長と体重からは、「背が高くてスタイルが良さそうな人」がイメージできます。少なくとも肥満ではないことは明らかですので、T 氏はBMIを計算するまでもなく、肥満ではないことがわかります。

ほかのについても「どんな姿なのか」をイメージすると、V氏とW氏は肥満ではないだろうということが分かります。S氏とU氏はデータから肥満かどうかを判断するのは難しいので、この2人だけ BMIを計算すると、 S氏は25.3、U氏は24.8となるので、肥満と診断されるのはS氏1人とわかります。

数字やデータから実物をイメージする

ビジネスの現場で使われる数字やデータの裏側には、必ず何らかの実物・実態がともなっています。ですので、数字やデータをうまく使うには、その裏側にある実物・実態をイメージすることが大切です。実物・実態をイメージできていれば計算ミスなどで変な数値が出てきてもすぐに気がつくことができるので、ミスを減らすことにもつながります。

今回のテーマのように、 数字やデータをうまく使う方法も、ビジネス数学で学ぶテーマの1つです。数字やデータの活用能力の向上のために、ビジネス数学をぜひ活用していただければと思います。

記事を書いた人

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近藤 恵介

公益財団法人 日本数学検定協会 ビジネス数学コンテンツ部マネジャー

東京工業大学大学院生命理工学研究科修了後、予備校講師などを経て現職。数学と社会の関わりについて研究し、「ビジネス数学」という新しいジャンルを開拓。「ビジネス数学」に関する講座や検定試験などの企画・運営を手がける。