「MATHコン2024」の日本数学検定協会賞が決定
ゲーム理論を用いて 事前宣言型のじゃんけんを共同研究
条件ごとに双方の利得をまとめた中学校3年生3人が受賞
算数・数学の実用的な技能を測る、実用数学技能検定「数検」(数学検定・算数検定、以下「数検」)」を実施・運営している公益財団法人日本数学検定協会(所在地:東京都台東区、理事長:髙田忍、以下「当協会」)は、一般財団法人理数教育研究所が主催している「塩野直道記念 第12回『算数・数学の自由研究』作品コンクール」(通称「MATH(マス)コン」)の優秀賞の1つである「日本数学検定協会賞」を決定し、2024年12月15日(日)に東京都内で行われた表彰式で受賞者を表彰いたしました。

受賞したのは、「じゃんけんのルールを変えてより面白くする」という共同研究の作品を応募した秋田県在住の中学校3年生3人です。
塩野直道記念「算数・数学の自由研究」作品コンクール公式ホームページ
「なぜ?」「本当?」「どうなる?」からはじまる算数・数学の自由研究
今年度(2024年度)で第12回の開催となる塩野直道記念「算数・数学の自由研究」作品コンクールは、全国の小学生・中学生・高校生を対象に、日常生活や社会で感じたさまざまな疑問を算数・数学の力を活用して解決する、あるいは、算数・数学の学びを発展させて新たな数理的課題を探究するなかで、気づいたことやわかったこと、自らの解決の方法などをレポートにまとめ、作品として応募するコンクールです。テーマは自由で、毎年さまざまなテーマの自由研究作品が集まります。なお、今年度の応募作品数は、合計15,570件でした(2023年度は15,699件)。
ゲーム理論を用いた「面白いじゃんけん」を考案した中学校3年生の3人が受賞
本コンクールに2016年度から協賛している当協会は、すべての応募作品の中から、とくに算数・数学の研究として優れたレポート1作品に優秀賞として「日本数学検定協会賞」を授与しています。
今年度の「日本数学検定協会賞」は、ゲーム理論を用いた事前宣言型のじゃんけんの共同研究に取り組んだ、秋田県在住の大宮周(おおみや あまね、 14歳、中学校3年生)さん・白坂柚葵(しらさか ゆずき、15歳、中学校3年生)さん・菅原琉也(すがわら りゅうや、15歳、中学校3年生)さんが受賞いたしました(いずれも年齢は応募当時)。
大宮さん・白坂さん・菅原さんは、ゲーム理論※1に出合ったことで、最適解はあるが、裏をかくかどうかという読み合いのできる「面白いじゃんけん」を作ろうと考えたそうです。
この「面白いじゃんけん」では、一般的なじゃんけんに以下のルールを追加しました。
・最初に双方のプレーヤーは同時に、自分が何の手を出すかを宣言する
・プレーヤーのどちらも宣言した手以外も出すことができる
そして、それぞれのプレーヤーには宣言の内容と実際に出した手、そしてじゃんけんの勝敗により固定の点数が与えられるよう設定しました。
また、「面白いじゃんけん」の条件を以下のように定義しました。
条件Ⅰ:ある1つの選択肢を選び続けることで、利益を最大化することができない
条件Ⅱ:純粋戦略ナッシュ均衡※2(プレーヤーの最適反応の組)がいかなる場合においても存在せず、特定の選択肢を選
び続けることがない
※1 ゲーム理論
複数の意思決定者(プレーヤー)が互いに影響を与え合う状況で、それぞれの意思決定や戦略が結果にどのように影響するかを分析する数学的な枠組み。数学者のフォン・ノイマンが発想したといわれており、ゲーム理論から「囚人のジレンマ」などのさまざまな定理が生まれた。
※2 ナッシュ均衡
ノーベル経済学賞を受賞した数学者ジョン・ナッシュが提唱したゲーム理論における重要な概念の1つ。プレーヤーがそれぞれ自分の戦略を固定し、その状態でどのプレーヤーも自分の戦略を一方的に変えても得られる利得が増えないような安定した状態のこと。

大宮さん・白坂さん・菅原さんは、上記のルールと条件をもとに、勝敗によって与えられる得点差の調整やナッシュ均衡の検証などを行いながら検証を繰り返し、じゃんけんを「多少頭を使う運のゲーム」から「深い読み合いをする戦略的ゲーム」へと発展させました。
さらに、大宮さん・白坂さん・菅原さんは、プレーヤーが3人になったときにも成り立つ「面白いじゃんけん」を作ることができるかということを、今後の課題としています。
算数・数学の実用的な技能を測る「数検」を実施している当協会は、日常的な事象に改善の余地を見いだし、合理的な意思決定のあり方について数学的に試行錯誤しながら新たな価値の創造にチャレンジしている姿勢を評価して、このたびの「日本数学検定協会賞」の受賞を決定しました。
なお、大宮さん・白坂さん・菅原さんの受賞コメントと応募作品への審査委員の講評は以下のとおりです。
<大宮周さん・白坂柚葵さん・菅原琉也さんの受賞コメント>
私たちの研究は、学校の探究活動のなかでゲーム理論に興味を持ち、そのおもしろさを生かしたいという思いから始まりました。試行錯誤を重ねて知識を深めてきた結果、「日本数学検定協会賞」を受賞できたことに、大きな喜びと驚きを感じています。また、中央審査委員の方からいただいた講評を通じて、今後の研究における課題を認識すると同時に、私たちの研究方針に対する自信を深めることができました。
このような貴重な経験を得る機会をくださったコンクールの運営者の方々、日ごろから支えてくださる先生方、そして活動の場を提供してくださる環境に、心から感謝申し上げます。この経験を励みに、これからも研究活動に一層取り組んでいきたいと思います。

<審査委員の講評>
タイトルのとおり、じゃんけんのルールを変えることでよりおもしろいゲームをデザインした研究です。じゃんけんという簡単なゲームに「自分が次に出す手を宣言する」というオプションを付加すること、およびじゃんけんの勝敗による点数を導入しました。それにより新しいゲームをゲーム理論の考察にのせることができています。初めて知ったゲーム理論にもかかわらず、ナッシュ均衡・パレート最適といったゲーム理論の概念をうまく使いこなしています。
当協会は、MATHコンのような理数教育の充実に向けた普及推進イベントなどに積極的に関わることで、今後も広く国民のみなさまに算数・数学を学習する大切さや、楽しさを伝える普及啓発事業を充実させてまいります。
開催概要
名 称:塩野直道記念 第12回「算数・数学の自由研究」作品コンクール(2024年度)
主 催:一般財団法人 理数教育研究所
協 賛:株式会社 学研ホールディングス/株式会社新学社/公益財団法人 日本数学検定協会
応募資格:小学生、中学生、高校生
※海外の日本人学校も含む。
※グループで応募する場合は、同じ学校の同学年の応募に限る(1グループ4名まで)
審 査:
1.小学校の部 … 低学年の部(1~3年)、高学年の部(4~6年)に分けて審査。
2.中学校の部
3.高等学校の部(高等専門学校3年次までを含む)
公式ホームページ:
https://www.rimse.or.jp/research/
公式YouTubeチャンネル:
MATHコン チャンネル
※くわしくは、公式ホームページをご覧ください。
お問い合わせ先
【本コンクールに関するお問い合わせ先】
一般財団法人 理数教育研究所
「算数・数学の自由研究」係
TEL:06-6775-6538
E-mail:mathcon@rimse.or.jp
URL: https://www.rimse.or.jp/research/
【本リリースに関するお問い合わせ先】
公益財団法人 日本数学検定協会
広報担当
TEL:03-5812-8342
E-mail:kouhou@su-gaku.net
URL:https://www.su-gaku.net/