横浜雙葉中学高等学校

今までになかった学びで、数学の実用性と魅力に気づいていく
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2023年度から始まった新しい数学の授業「数学研究」で、ビジネス数学講座を取り入れた横浜雙葉中学高等学校。どのような経緯で導入し、生徒や教員の間でどんな評価を得ているのか。数学科の末石貴大教諭に話を伺いました。

活用の概要

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貴校では、2023年度からビジネス数学講座を実施されていますが、カリキュラムのなかではどのように位置づけていらっしゃるのでしょうか?

本校では、新課程が始まるとともに、高校2年生を対象にした「数学研究」という授業を始めました。週2コマのうちの1コマで、ビジネス数学講座を実施しています。講座の内容は、日本数学検定協会と話し合ったうえで決めました。全26回の授業のうち、最初の2回と最後の2回は日本数学検定協会の講師にご担当いただき、それ以外のところは本校の数学科の教員が担当しています。

この「数学研究」を受講するのは、「文A系※」を選択した生徒たち全員です。2023年度は50人ぐらいでした。すべての授業が終わったところで、希望者は「ビジネス数学検定3級」を受検します。まだ募っていないので志願者数はわからないのですが、授業の感触がよかったことと自宅でも受けられることから、志望する生徒は少なくないのではないかと思います。
※文A系=文系学部への進学を希望する選択コース

導入の背景

ビジネス数学講座を、貴校の教育に取り入れた目的は何でしょうか?

大きく2つあります。まず1つは、社会のさまざまな変化のなかで数学に求められるものが変わってきたと感じていたからです。学習指導要領も、この社会の変化のなかで定期的に改訂されています。私たちも、新しい数学教育の取り組みを模索していました。

もう1つは、生徒たちのモチベーションです。以前は、文A系選択の生徒にも数学Ⅱの教科書を用いて、内容を最後まで教えていました。全員が数学Ⅱまで学習することの教育効果を感じていたからです。ただ、数学Ⅱは高等学校の履修上は必修科目ではなく、文A系選択の生徒の多くにとっては大学受験でも必須でないことから、学ぶモチベーションの維持がなかなか難しいという面がありました。

世の中の変化に対応することも考えたときに、必ずしも数学Ⅱを最後まで学ぶことにこだわらなくてよいのではないかという話もあったので、定期試験で点数をつけることをしない、本校独自の「数学研究」という授業を実施しようということになったのです。

ただ、完全に独自のものを、すべて自前で用意するのはたいへんです。そこで文A系選択の生徒が、社会に出てから活用できる数学を学べるものがないかといろいろ調べたところ、日本数学検定協会の「ビジネス数学」がそれに近いものではないかと考え、導入を決めました。

ほかの先生方の反応

ほかの先生方からは何か、ご意見や感想はありましたか?

おおむね好評です。とくに、他教科の先生に「ビジネス数学の授業を実施します」と言うと、「おもしろそう」「社会に出たときに役立つかも」という前向きな反応が多かったですね。数学や理科以外の先生たちの中には、学生だったときに数学が苦手だったという方もいらっしゃるようで、これまでになかった数学の教え方に期待しているようでした。

このビジネス数学の授業は私が提案したのですが、2023年度は数学科の増山由美子先生にご担当いただきました。これまでビジネス数学を学んだ経験はないそうです。それでも、授業を見学させてもらうと、ご自身も楽しんでいる様子でした。ビジネス数学の内容は、既存の教科書の内容とは異なる部分もあるため慣れない部分もあるのですが、実際に取り組んでみると教員もおもしろいと思えるようです。

生徒の反応

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ビジネス数学講座を1年間実施してみて、生徒の反応はいかがでしょうか。

私の個人的な印象ですが、数学に対するとらえ方が変わったように見受けられます。それまで習っていた純粋数学では正確な計算が求められますが、ビジネス数学は数字をざっくり扱っていくところがあって、生徒たちは「ざっくりでいいんだ!」という反応でした。そんな生徒たちの明るい表情を見て、この新しい数学の授業を取り入れてよかったと思っています。

授業を担当した増山先生の話によれば、生徒たちに「この授業はどうだった?」と感想を聞いたら「よかった!」という声が多く返ってきたそうです。それから、この授業では毎回生徒たちに感想を書かせているのですが、そのなかには、社会で必要な数学を小学校のときに習っていたということに気づいて、驚いていた生徒もいたようです。少なくとも、今年度にこの授業を受講した生徒たちは、それなりに満足していました。

独自の取り組み

貴校における数学教育で、ほかに独自に取り組んでいらっしゃることはありますか?

先ほど少し触れましたが、本校の「数学研究」という授業は週2コマあって、そのうちの1コマでビジネス数学講座を実践しています。もう1コマの授業は、2023年度は私が担当したのですが、こちらも社会や身近な生活で活用できる数学を教えています。たとえば、前期は株式や複利など、後期は宝くじやひと筆書きなどを取り上げました。

講義だけでなく、グループワークも取り入れ、数学が得意でない生徒であってもそれなりに楽しく学んでいますね。ビジネス数学とあわせて、数学に対するイメージが生徒のなかである程度変わったと感じています。

今後

今後、数学の授業でどのような取り組みを考えていらっしゃいますか?

ビジネス数学講座は、来年度(2024年度)も引き続き実施しようと思っています。来年度も、日本数学検定協会の講師と本校の教員が分担して教えるかたちにしたいと思っています。

私は、数学の教員なので、当たり前かもしれませんが数学がとても好きです。生徒には、純粋数学や大学受験のための数学以外にも、社会のなかで活用されるような実用的なものも含めて、数学のいろいろなおもしろさを伝えたいと思っています。もちろん、生徒が希望する進路に向かえるように、教科書の内容をしっかり教える授業が大事なのですが、いろいろなところで生徒たちが数学の魅力に気づけるような取りくみを、今後も実施していきたいと思っています。