株式会社田子重

目次
【きっかけ】数字で考えて表現する力を伸ばしたい
毎年、ビジネス数学の研修と検定をセットに実施していますが、その導入の背景や経緯を教えてください。
当社がビジネス数学研修・検定のことを知ったのは2018年でした。
当時の専務(現社長)の指示で、経理のマネージャーが銀行主催の商談会に参加しました。
その時、日本数学検定協会の担当者も参加されていて、ビジネス数学を紹介いただきました。その場でいろいろと話を伺い、持ち帰った学習用テキストも確認したところ、これで研修ができたら良いのではないかという話になりました。
当社の社員は数字に弱い傾向があり、これが長年の課題でした。数字で理解する、数字を使って考える、数字をもとに分析する、数字を活用して表現するといったことが苦手な社員が多数いました。そこで、数字に強くなるきっかけの1つとして、ビジネス数学研修を導入することにしました。研修は1年に1回実施しています。約25人が対面形式の研修を受講。その後、ビジネス数学検定を受検します。
まずは、会社の中枢を担うグループマネージャーや店長より上の管理職に受けてもらいました。いわゆる「課長職以上」の社員です。現在は、若手社員に向けて実施しています。
目標は、社員全員の3級習得です。現在の社員数は約280人で、その約4割弱の120人が取得している状況です。
【反応】拒絶反応から「数字っておもしろい」へ
ビジネス数学の研修を受けたとき、社員の方たちはどんな反応を示されますか?
先ほども少し触れましたが、当社の社員は「数学」「数字」ということばを聞くと即座に拒絶反応を示すことが多いのですが、この研修を受けると「数字って、けっこうおもしろいな」と考えが変わる傾向が多いです。研修はグループワークも多く、受講している社員たちが笑顔でやり取りしている様子を見ることもできます。受講中に数字に対する不安が消えて、むしろ楽しく学ぶことができているようです。受講者の声としては、
「今回の研修では、データを解析するときは最初に全体を把握することの大事さを知りました。データを1つずつ調べていると時間がかかってしまうので、まずはざっくりと数字を見る。それができるようになりたいと思いました」
「私は数字がとても苦手なのですが、今回の研修でいちばん学んだことは、数字と向き合うことの重要性でした。これからは、仕事の会話のなかに必ず数字を入れたいと思います。仕事の指示を出すときでも『4時までにやってください』『これを30分でお願いします』などと数字を入れる。そうすることで互いに仕事に向かう意識が変わっていくのではないかと思いました」
など前向きな意見が聞けました。

この研修の良いところは、「計算力を鍛える」という内容ではなく、「数字を使って物事を考える重要性を知る」という内容になっているところです。
研修後のアンケートを見ても良い反応が見られます。とくに、仕事に直結する内容が印象に深く残るようです。たとえば、限られた経営資源のなかで取引先に対する優先度のランキングを数字で決めていく方法や、制服を選ぶときにデザイン・機能性・フォロー体制のそれぞれを数値で評価して候補メーカーの順位をつけるやり方などです。受講しながら、ふだんの仕事に生かせると思ったのではないでしょうか。
【ねらい】数字に強いスーパーマーケットになりたい
この研修の効果について手ごたえを感じていらっしゃいますか?
当社の役員は、スーパーマーケットにおいて社員が数字に強いということは重要な要素であると考えています。この研修を実施することで、数字に対する社員の意識が変わっていくことを求めています。
数字を使って物事を考えられるようになると、経営的な観点を含めて、さまざまなことが全体的に見えてくるようになります。たとえば、小売業ではロス(廃棄)の改善がよく言われるのですが、ロス率だけを見ていると実態が見えなくなるときがあります。ロス率50%の商品でも、月間の売上が1万円ぐらいしかなければ、ロス率を改善したことによる利益の改善は限定的になってしまいます。売上が1,000万円の商品のロス率を5%下げるほうが効果的な場合もあります。
数字を使って物事を考えたり、分析したり、伝えたりということを学ぶ機会は、このような研修以外になかなかないものです。この研修を受けた社員には、学んだことを店に持ち帰って生かしてほしいと思っています。
当社では今、社員自ら挑戦したいことを宣言する自己申告の機会を設けています。
その申告のなかには「数字の活用を勉強したい」「ビジネス数学検定を受検してみたい」と申告する社員も見受けられます。この研修を受講して意識が変わったのでしょう。個人的には、数字に対する社員の意識は年々上がっていると感じています。
今は3級の全員取得をめざしていますが、今後は2級にも受検していきたいです。マネージャーからチャレンジして、より数字に対する考え方やとらえ方のレベルをさらに上げていく。そんな目標もあります。
【必要性】国語と同じぐらい求められる数字を扱う力
これから社会に出る高校生や大学生に向けて、「このスキルは身につけておいてほしい」と思うスキルはありますか?
よく高校生や大学生に伝えるのは、基礎学力の重要性です。とくに国語と算数です。会社に入って活躍したいと思うのなら、正しい日本語が使えること、それときちんと計算ができることが大事です。その理由は、社会では、さまざまな人とコミュニケーションを交わす機会がたくさんあるからです。
当社のようなスーパーマーケットでは、取引先と商談することが毎日たくさんあります。そのときに、数字を使って明確にわかりやすく説明し、正しい日本語を使って間違いなく伝えることがなによりも大切になります。
また相手から送られてきた文書や資料、データなどに対しても、す早く読み解いて、そこにどのような意図が込められているのかを正しくつかまなくてはなりません。ここでも日本語や数字を正しく理解する力が重要になります。
さまざまな企業がありますが、活躍できる人の条件の1つはやはり数字を使って分析し、数字を使ってお客様や取引先、従業員などに説明できるということなのだと思います。
数字を使って情報や選択肢を取捨選択して「これがいちばん効果的だ」と言えるような力が、これからの時代ではますます求められるように感じます。このような力を、時間に余裕がある学生のときに身につけておくとよいと思います。