日本コンベンションサービス株式会社

文系出身者が多いからこそ数学の学びを支援する
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(掲載元:総務省HP)
2019年から自社の社員にビジネス数学検定の受検を推奨している日本コンベンションサービス株式会社。通訳や国際会議などコミュニケーションにかかわる事業が多く、社員のほとんどは文系出身者。では、どうしてビジネス数学を学ぶ機会を提供しているのでしょうか。今回は、人材企画開発部副部長の髙橋勝さん、人事部の齊藤恵子さんに話を伺いました。

【きっかけ】事業の未来を予測する力を高めたかった

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2019年から社内でビジネス数学検定を実施することになった経緯を教えてください。

弊社では、おもに部長クラスなどの管理職や新卒入社などの若手、そして自ら手を挙げた希望者にビジネス数学検定の受検を推奨しています。理由はいくつかあるのですが、1つは事業計画の精度を高めることにありました。

弊社では、事業計画を各部署の部長が作成します。弊社の事業はコミュニケーションにかかわるものが多いため、数字よりも人と接する事を得意とする文系社員が多くおります。だから、いざ管理職になって事業計画に携わるようになると、数字を扱うことに苦労する人が多いです。そのため社長から「事業計画を作成する能力を向上する施策を打ってほしい」と人事部に依頼がきました。

そこで、事業計画を作成するうえでとくに弱い分野が「市場の分析や財務などの計数管理」にあると判断し、人事部としてこのスキルを高めていこうとなりました。「それなら簿記を学ばせよう」という意見も出たのですが、簿記の知識よりも、マーケティング分析で未来の利益をきちんと予測できる能力や部署の損益を間違いなく計算できる能力を養うほうが効果的だと考え、何か良い資格や検定がないかと模索していたら「ビジネス数学検定」を見つけたのです。まず、部長を対象に実施した計数管理力を高めるマネジメント研修の一環で、ビジネス数学検定を実施することになりました。

【求めるもの】全員がビジネス数学検定2級に認定されるぐらいのレベルがほしい

ビジネス数学検定を実施することになって、どのような変化がありましたか?

定量化はなかなか難しいのですが、たとえば先ほどお話した事業計画の精度は上がったと感じています。とくに市場調査の分析力が増しました。事業計画を精査する経営企画部の担当者も同様の感覚を持っています。ビジネス数学検定に一生懸命に取り組んでいる社員ほど計数管理の能力があるという声もあります。

会社がこれからも成長するには、全社員がビジネス数学検定2級に認定されるぐらいのレベルがほしいと考えています。人事部としては、誰もが部長を担える状態をめざしてもらいたいという思いがあります。だから、新入社員から受検してもらうことを推奨しています。

【モチベーション】数字の重要性を強く認識した社員たちが受検を希望

ビジネス数学検定の受検を自ら希望するのはどんな方たちですか?

日々の業務のなかで、数字の扱いやデータの重要性を認識している社員です。たとえば、弊社には大きなイベントを運営する事業があって、そのなかには予算まで預かって管理するケースもあります。数億円規模になることもあるのですが、最後には間違いのない収支報告書をお客様に提出しなくてはいけません。このような事業にかかわる社員は、数字の重要性をよく理解しています。ビジネス数学検定の受検を推奨することになったとき、この部署の社員たちから多くの希望がありました。部署内全体で「この検定を受検しよう!」という意気込みが生まれたそうです。

コミュニケーションが中心の事業が多くても、数字が必要になるときは必ずありますし、お金の管理をしっかりとしなければならないときもあります。そのような場面が多い部署ほど「数字に強くならなきゃ」という意識が強くなり、数字に関する検定や資格のニーズも高くなるということです。

【データサイエンスへ】データサイエンスに強くなるための数学スキルにも挑戦

ビジネス数学検定だけでなく、データサイエンスの基盤となる数学力を証明する「データサイエンス数学ストラテジスト」の資格試験にチャレンジする社員の方もいらっしゃいますが、反応はいかがですか?

数字やデータをさらに仕事で活用できないかと考える社員が受験しています。たとえば、先ほどのイベント運営にかかわる部署にいるベテランのチームマネジャーは数字の扱い方をもっと学習したいということで、「データサイエンス数学ストラテジスト」の資格試験に挑戦しました。業務が多忙のなかでも学習して合格していました。

この社員はイベントを運営するなかで、参加者やスポンサーにかかわる数字など、さまざまなデータを扱っていて、おそらくそれをもっと分析できれば今まで見えなかったことがわかるようになるのではと感じていたようでした。その手がかりを得るために、この資格に挑戦したのでしょう。

ビジネスであれば、さまざまなところに数字やデータがありますからね。そのような数字やデータをさらに活用したいという意識を強くもつようになった社員が挑戦しているようです。今後、部署全体で「数字やデータを扱う力がもっと必要だ」という意識をもったとき、何か大きな変化が爆発的に生じるのではないかと考えています。

【ビジネスと数学】文系社員の多い会社だからこそビジネス数学検定を受検する意味がある

人事部のご担当者として、ビジネスで必要となる計数の能力は学生時代に身につけておいてほしいと思いますか?

いや、そうは考えないですね。やはり学生は学校での学びが重要で、そこで自分がいかに深く考えたり、自分の得意なものを見いだしたり、あるいは困難や挫折を乗り越えたりと、学生だからこそできることを突き詰めてほしいと考えます。私たちが重視するのは学生時代の経験です。

ただ、確かに数字を扱う力や論理的な思考力は社会人として必要なものです。でも、それは入社してから学ぶのでも良いと思います。弊社が新卒入社の社員にビジネス数学検定を推奨するのは、文系のなかでも数学が苦手だったという人が多いからです。

もう少し言うと、弊社は多様な事業を展開しています。通訳や国際会議や学会の運営、人材サービス、まちづくりなど、実にさまざまな事業があり、収益構造もまったく異なります。弊社の社員には、どんな部署でも、たとえば損益にかかわる数字の基本的な意味を捉えられるようになってほしいです。異動になっても「営業利益というのはこういう意味だよね」と、数字が物語っていることが何かを理解できるような汎用的な力をもってほしいです。

文系出身者の多い会社だからこそ、会社のなかでそういった力を身につけていく支援をする必要があるのだと思いますし、ビジネス数学検定を実施する意味はそこにあると思っています。