仕事で数学発見!
オーガニック成分1%でも「オーガニック製品」?
商品開発における数学
今回は、株式会社たかくら新産業のショールームにおじゃましています。たかくら新産業は、世界中からライフスタイルを豊かにする製品を自社で開発したり集めたりして販売している会社で、とくにオーガニック製品が人気なのだそうです。
オーガニック製品と数学の関係について、株式会社たかくら新産業の代表取締役 高倉健さんと、マーケティング&MDデヴィジョンの小室美喜さんに、お話をうかがいました。
高倉さん、小室さん、本日はよろしくお願いします。
- 高倉さん:
- よろしくお願いいたします。
こちらのショールームにはいろいろな商品が置いてありますが、どのようなお仕事をされているんですか?
- 高倉さん:
- たかくら新産業は、百貨店に勤務して洋服売場を担当していた私が29歳のときに立ち上げた会社で、最初は海外の洋服を中心とした製品の輸入販売を中心にしていました。こだわりが強いお客さんのために、より良い商品を紹介して販売したいという思いで仕事をしています。
ショールームにある製品は、オーガニック製品が中心のようですね。
- 高倉さん:
- はい。自分自身や家族の病気を経験したので、安心して使える身体に良い製品を紹介したり、作っていきたいと思うようになりました。同じような考えのお客さんがたくさんいらっしゃいましたので、弊社の事業の中でもとくに成長しています。
- 小室さん:
- 私は、そんな高倉のアイデアを具現化する開発やマーケティングの仕事を担当しています。オーガニック製品の効果や成分のリサーチ、使用する植物の選定を行っています。
「オーガニック」という言葉がつけられた製品やサービスを耳にしますが、「オーガニック」の定義って決まっているんでしょうか?
- 高倉さん:
- 実は「オーガニック」という言葉の使用にあたっては、法律的なルールはとくにないのです。たとえば1%でもオーガニック成分が入っていたら、オーガニックを銘打っても問題はないわけです。
- 小室さん:
- ただ、これでは「オーガニック」という言葉への信頼が揺らいでしまいます。ですから、弊社が製作している製品には、オーガニック成分配合率を明記しています。
- 高倉さん:
- これが弊社の製品を安心して使ってもらうためのくふうです。しかし「%」という考え方は、わかりやすい基準となる一方で、情報をゆがめることもできてしまいます。
全体のうちの1%にしか当たらない成分のオーガニック成分比率が100%でも、「オーガニック100%」といった言い方ができたりしますね。
- 小室さん:
- そうなんです。数字はギミックとして使われやすいので、確かな数字をきちんと届けることがたいせつですね。少しでも「オーガニック100%」に近づけていきたいというのが弊社の挑戦の1つです。
でも、オーガニック成分の比率をきちんと明記するということは、商品開発でもたいへんなことが多そうですね。
- 小室さん:
- そうですね。たとえば日焼け止めの効果には明確に定められたルールがあります。
日焼け止めには、効果によって「PA+++」などの表記がされていますよね。
- 小室さん:
- はい。その基準は化学原料を使えば比較的かんたんにクリアできるのですが、オーガニック成分だけでそれをクリアしようとすると、結果やコストがとてもシビアになります。
価格のことも考えなくてはいけませんものね。
- 高倉さん:
- 100%をめざすことはたいへんですが、できるだけみなさんの手に行き届く形で製品を作ることができるよう努力しているところです。
ほかにもさまざまな製品を扱っているんですね。こちらは「アウトドアモスガードスプレー」と書いてありますが、どんな製品なんでしょうか?
- 高倉さん:
- それは、化学薬品を使っていない肌や体にやさしいアウトドアボディスプレーです。弊社の商品の中でもかなりの人気商品なんですよ。
虫よけスプレーを全部オーガニック成分で作っているんですか!
- 小室さん:
- そうですね。よくある市販の虫よけスプレーには、殺虫成分が入っていたりするので、肌の弱い人はかぶれたりしてしまいます。それらの成分を自然由来の成分で作り出すのは、なかなか難しいのですが、おかげさまでたくさんの方に受け入れられることができました。
ペット用品もあるんですね!
- 高倉さん:
- はい、ペット用品もとても人気の商品です。とくに犬用のシャンプーなどが人気ですよ。
数学はコストについても関係があるようです。
- 高倉さん:
- オーガニック製品と数字の関係で言えば、コストについてもおおいに関係があるんですよ。
- 小室さん:
- 先ほどお話しましたが、オーガニック成分の比率を上げると、原価が上がってしまうので、どうしても高くなり、商品の価格にも影響してしまいます。
- 高倉さん:
- でも、オーガニック成分を多く使用した製品を、できるだけ低い価格でお客様に届けたいというのがわれわれの思いです。
なるほど。だから生産のコストをできる限り低くするためにくふうが必要なんですね。
- 高倉さん:
- そのとおりです。製品を製造するときに効率の良い生産ロットというものがあります。一度に5,000個生産するよりも、50,000個生産する方が値段は安くなりますよね。また、ボトルは5,000個発注するけれども、ラベルは一気に10,000枚発注したほうが値段は安くなるなど、効率の良い組み合わせもあります。
- 小室さん:
- このように、もっとも効率のよい生産管理のために数学が生きていたりします。少しでも生産コストを下げることで、ハイクオリティな製品をよりお求めになりやすい価格でお客様に届けることができます。
なるほど。オーガニック比率の高い製品を世の中に送り出すために、数学が生きているんですよね。
- 高倉さん:
- 一見関係ないようにみえても、オーガニックと数学は結構関わっているんですよ。
高倉さんと小室さんは、算数や数学が得意でしたか?
- 高倉さん:
- 算数は苦手でしたけど、数学は好きでしたよ。数学は、きちんと答えが出るところが僕は好きですね
- 小室さん:
- 私は算数の文章題などは苦手でしたが、そろばんはとても好きでした。暗算するときは頭の中にそろばんが出てきます(笑)。なんとなくそこで、数字を扱うセンスのようなものが育まれたように思います。
オーガニック製品と数学の話、とても勉強になりました。本日は貴重なお話をありがとうございました!
高倉さんがおっしゃっていたように、「%」というのは消費者にとって、とてもインパクトがあるものですよね。だからこそ正しく理解して、かしこい消費者として製品を選ぶことが大切ですね。
よりクオリティの高いオーガニック製品を安く届けるために、生産管理でさまざまなくふうをされているというお話は興味深かったです。企業の思いを伝えるために数学が役立っていることが感じられるお話でした。
今回お話を伺ったのは…
高倉 健(たかくら けん)(左)
株式会社たかくら新産業
代表取締役
小室 美喜(こむろ みき)(右)
株式会社たかくら新産業
マーケティング&MDデヴィジョン