仕事で数学発見!
数字を集めて未来を予測する!
「ヤフオク」の「行動分析」
今回は、インターネットサービスを幅広く手がける、ヤフー株式会社 ヤフオク!カンパニー事業推進本部の佐藤和明さんに、「ヤフオク!」と数学の関係についてお話をうかがいました。
着なくなった服を売るなど、ヤフオク!を利用されている方も多いかもしれません。どんなお話が聞けるのか楽しみです。
佐藤さん、本日はよろしくお願いいたします。
- 佐藤さん:
- よろしくお願いいたします。
IT企業という感じがする、おしゃれなオフィスですね! ヤフー全体では、どのくらいの社員さんが働いているんでしょう?
- 佐藤さん:
- 流動的ですが、ヤフー全体では5,000人以上が働いています。私が働いているのは、その中でもヤフオク!カンパニーという、 ヤフオク!を手がける事業会社です。
社内にカンパニーがあるんですね。ヤフオク!は、日本ではいつからサービスを始められたんですか?
- 佐藤さん:
- 日本では1999年からスタートしたので、15年ほど前から運用しています。日本のインターネットオークションの第一人者として、現在では約1000万人の方に利用していただいています。
ヤフオク!って、本当にいろいろなものを取り扱っていますよね。
- 佐藤さん:
- そうですね。取引の中心となっているのは、家電やファッションなどのふだんの生活で頻繁に使うものに加え、自転車・オートバイや、昔のおもちゃや硬貨の製造過程で出たエラーコイン、電話番号やドメイン、そして「官公庁オークション」においては地方自治体など行政機関の差し押さえ品など、多種多様なものが出品されています。
なるほど。オークションは相対的に価値が決まるので、その人によっては価値がゼロでも、ある人にはとても価値をもつという現象が、目に見える形で体験できるのがおもしろいですよね。
- 佐藤さん:
- そうですね、まさに社会と市場の原理がよく見えるサービスですね。
佐藤さんはヤフオク!事業の中で、どのようなお仕事をされているのですか?
- 佐藤さん:
- ヤフオク!全体の売り上げや経費などを管理し、事業の先の見通しを立てます。たとえば、ヤフオク!の事業で利益をあげるためには、多くの人に商品を出品していただき、取り引きをしていただくことが重要です。 たくさんの人に利用していただくため、アクセスの誘導は効果的にされているか、ユーザーインタフェースは使いやすいかなどを考えながら改善し、収益につなげていく必要があります。
具体的には、どのように数学を使っているのでしょうか?
- 佐藤さん:
- そうですねもう本当に数字だらけなんです。たとえば、オークション利用者の年齢や性別などを集計するときは、数字のデータとして提示されますよね。そこからどのような情報を読み取るかという能力が必要になります。
人間の行動を数字に置き換えることで、比較検討できる材料になりますよね。
- 佐藤さん:
- そうなんです。ほかにも天気やイベントごとなども売り上げに関連してくるので、これから先の見通しをたてるときには、それらの数字も考慮しなくてはいけません。
それはどういうことですか?
- 佐藤さん:
- 雨や雪が降っている日って、あまり外出したくないですよね。そうなると家でオークションをする人が多くなるので、売り上げがあがります。また、オリンピックなどの行事があればテレビやスポーツ用品の出品が多くなります。このような人間行動に基づくデータが必要となってくるのです。
すごいですね! 数字を集めて未来を予想するんですね!
- 佐藤さん:
- 数学を使うのは先の見通しをたてるときだけではなく、現状の改善をするためにも役立っています。ウェブサイトは、文字やアイコン、バナーなどをどこに置くかというだけで、アクセス数が変わります。さまざまなパターンを試しながら、最適解を探る。これも数字を集積することで、はじめて可能になる作業と言えますよね。
改善の方向を定めることができるんですね!
- 佐藤さん:
- はい。ヤフオク!のページを見ていただくと、昔と比べてかなり使いやすくなっていると思います。ネットオークションサイトはたくさんありますが、そのなかでお客さまに選ばれ、使い続けていただくためにも、使いやすさを追求することはとても大切なことです。
他に、数学を使用されている事例などありますか?
- 佐藤さん:
- これは考え方なのですが、これから使われる経費を予想したとします。たとえば、経費Aが100万円、経費Bが100万円、合わせて200万円の経費といったようにです。ところが、これが実際の結果としては経費Aが50万円、経費Bが150万円で200万円の売り上げになったとします。AとBを合わせた経費は200万円なので、問題はないように思えるかもしれません。
でも、その内訳は決定的に違いますよね。
- 佐藤さん:
- そうです。「答えが同じでも式が違う」ということです。学校の数学でも習うように、式というのは考え方の記録です。式を追うことで、自分がものごとをどのように理解していたのか把握することができます。このような数学的思考は、私の仕事のみならず、社会では絶対に必要になってくる考え方です。
すばらしい考え方ですね。当たり前のようでいて、意外と実践できていない人も多いとても重要な要素ですね。
- 佐藤さん:
- そうですね。やはり、数学に強い人は重宝されると思います。
佐藤さんは学生時代、数学はお好きでしたか?
- 佐藤さん:
- 私は文系でしたので、数学を専門的に学習してこなかったんです。中高生のころはどちらかといえば苦手でした。 今の仕事は、好むと好まざるとに関わらず数字に敏感にならざるを得ないので、もっと数学を学習しておけばよかったなと、今になって思いますね(笑)。
佐藤さん、ネットオークションと数学の関係について、貴重なお話をありがとうございました!
佐藤さんの仕事での数学の生かし方は、実践的でインパクトがありました。人間の行動を把握しようとするとき、数字なしでは成り立たないということなんですね。
昔では考えられない手軽さでできるようになったネットでの商品売買ですが、裏側では佐藤さんのような方が改善を積み重ねていたことを知りました。改善のために数学が役に立っているということが分かる感慨深いお話でした。
今回お話を伺ったのは…
佐藤 和明(さとうかずあき)
ヤフー株式会社
ヤフオク!カンパニー事業推進本部 事業企画部事業企画
1984年神奈川県出身
駒澤大学経済学部卒業後、ヤフー株式会社入社