株式会社グランビスタ ホテル&リゾート

目次
【きっかけ】数字を扱うセンスはあらゆる職種で求められる

ビジネス数学研修と検定を毎年実施していますが、導入に至った背景を教えてください。
当社は、毎年、「新任マネージャー研修」を実施しています。マネージャーや係長に昇進したキャストが対象の研修です。3日間の充実した内容で、その中に、計数管理を学ぶプログラムパートがあるのですが、キャストの職種によっては響かないこともありました。
当社は、多種多様な事業を展開しており、ホテルをはじめ、水族館やゴルフ場、ハイウエイレストランなどを運営しています。ホテルで接客サービスをするキャストやレストランで調理をするキャスト、水族館で動物の飼育をするキャストなど、まさに「職のデパート」です。この「新任マネージャー研修」は、さまざまな職種のマネージャーや係長が参加します。
その多様な新任マネージャーたちに向けて計数管理のプログラムを展開し、営業収支表などを理解できるように学んでもらうのですが、ホテルの指標や原価計算を扱っても、全ての職種に共通するわけではなく、参加者の仕事に直結しないという課題がありました。
そこで当社において、どのような職種にもかかわる計数の共通項のようなものはないだろうかと模索していたときに、ビジネス数学研修「数的センス向上トレーニング」の無料体験会が開催されることを知り参加しました。様々な気づきを得られるカリキュラムで、たとえば「数字はざっくりと読む」ということを知って感心したりもしました。
この体験会に参加し、当社のキャストには、まずは、根本的に数字を使う重要性とセンスを身につけることが必要ではないかと思い、新任マネージャー研修のプログラムに組み込むことを検討し始めました。
社内でプレゼンを行い、2018年から新任マネージャー研修のプログラムの1つとしてビジネス数学研修「数的センス向上トレーニング:入門編」とビジネス数学検定2級、そしてビジネス数学eラーニングを導入することになりました。2024年までに毎年約20名前後が受講しており、これまでに約140名がこのプログラムを受けています。
【運用】ビジネス数学検定は受検階級を自分自身で選ぶ
研修は、毎年いつ実施されるのですか?
集合研修は、例年、9月か10月に実施しています。新任マネージャー研修プログラムは通信教育、集合研修、オンライン研修で構成される約6か月間のプログラムですが、ビジネス数学研修はその中の4時間ほどを割り当てており、対面で行ったり、双方向のオンラインで行ったりしています。
研修受講後には、ビジネス数学をいつでも学べるeラーニングを1年間自学で取り組んでもらいます。そして、研修から1、2か月後に検定を受検してもらうという流れです。
以前は2級しか選べなかったのですが、昨年からは3級も選択できるようにしました。事前にサンプル問題を見てもらい、本人に2級か3級を選んでもらいます。自分で選んだというプロセスがあってこそ、「がんばって学習しよう」という意欲につながると考えたからです。
【反応】フェルミ推定を水族館の飼育の仕事に生かす
社員の方々の反応はいかがでしょうか?
数学や数字に対して苦手意識をもつキャストが多いので、最初は「数的センス向上トレーニング」という研修名を聞いただけで、「何をさせられるのか」という不安があったようです。「私、本当に不安です」と直接言われたこともありました。
でも、研修は講師のトークがわかりやすく、すぐに数字のおもしろさに引き込まれていたようです。研修はさまざまなワークがあるのですが、そのたびに発見が得られるので、飽きることがないようです。グループワークも多く、参加者が互いに意見や気づきを与え合っていく学習スタイルは、チームワークの多い当社のキャストにはとても合っていると思います。
社員の方は、その学びをどのように業務に落とし込んでいくのですか?
この新任マネージャー研修では、全体としていろいろなプログラムを実施していくのですが、すべて終わったときに今後の行動について、キャストが自ら具体的なアクションプランを作成し発表します。そのなかには、ビジネス数学の学びを生かしたアクションプランを立てるキャストもいます。たとえば、「データと情報の違いを正しく理解して、自分の考えを込めた情報を提供していく」「数字を使って部下とコミュニケーションをとる」「これからは長期的な計画を立てるときに期待値を取り入れていきたい」といったプランを提出したキャストがいました。
印象的だった例を1つ紹介すると、水族館で飼育を担当している新任マネージャーが「数的センス向上トレーニング」でフェルミ推定を学び、論理的に概算しながら仕事を進めるというアクションプランを立てました。実際に仕事をしていると予測できないことが多くありますが、このキャストは「今あるデータや情報から論理立てて概算を用いて仕事を始め、新たな情報を得られるたびに精度を高め、仕事を中断せずに前に進められるようにしたい」と発表していました。学んだ数的センスをきちんと自分ごととして落とし込めていると思いました。
【効果】数字の苦手意識を払しょくすれば数字に興味が出始める
研修を運営するご担当者として、ビジネス数学のプログラムをどのように評価されていますか?
少なくとも、計数管理のプログラムだけを実施していたときよりはねらった効果が出ていると思います。また、ビジネス数学を研修に組み込んだことで、計数管理への抵抗感も低くなると感じます。数字に対するハードルが下がったことで、いろいろな数字を見てみたいという意欲につながっているようです。ここから大きな変化が生まれてほしいと思っています。大切なのは、計算力よりも数字の使い方や考え方のセンスをもつことで、数字に対する気持ちも楽になっていきます。そういった意識の変化を、受講者にはこのプログラムを通してもってほしいと願っています。
【必要性】エモーショナルな部分とロジカルの部分の両面が必要
ビジネス数学のスキルや数的なセンスの重要性について、人事に携わる山崎さんはどのように思っていらっしゃいますか?
当社は、サービス業のなかでも、お客さまの「おもてなし」がとても大切になるホスピタリティ産業の企業です。ご満足いただけるものをいかに提供できるか、毎日問われます。
実は、このような接客業務の表舞台では数字があまり出てきません。数字を使ってロジカルに説明しても、お客さまの心はあまり動きませんので、エモーショナルな働きかけがより重要になります。
しかし、企業の一員としては、数字を使って分析や説明、物事をロジカルに考えて処理することも重要です。ホスピタリティ産業だからこそ、エモーショナルな部分とロジカルな部分の使い分けが大切です。経験や感覚ですべて行動してしまうと、成功や失敗の原因もわからなくなり、改善が難しくなります。数字を使って考えるからこそ、物事の原点に立ち返ることができるのだと思います。
たとえば、調理に携わるキャストは、お客さまに喜んでいただくために、より良い食材を使って、最高の料理を提供したいと考えています。ただ、その一方で原価率も正確に計算する必要があります。決められた条件のなかでより良いサービスをいかに提供するかがとても大事なことで、エモーショナルな部分とロジカルの部分の2つが不可欠です。
当社のキャストは、基本的に接客やおもてなしなどが好きな人が多いので、仲間同士のコミュニケーションもエモーショナルなものになりやすい傾向があります。ホスピタリティーマインドをしっかりともちつつも、お客さまのいない裏舞台では数字を使ってロジカルに語り合ったり、現状を冷静に分析したりする。この両面性をもつことが、どんな職種でも求められるのだと思います。
ビジネス数学で学ぶような数的センスは、管理職だけではなく、会社で働いている誰もがもつべきだと思います。