学習数学研究紀要 創刊号(第2巻)

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- a.様々な運動 この分野は、いわゆるニュートン力学や古典力学ともいわれる物理の入り口であ る。様々な運動は、常微分方程式である運動方程式を、初期条件を設定することで 解は因果律で定まってしまうが、高校数学でベクトルや微分積分は学ぶものの、物 理の教科書では数学的な厳密性を欠いているものが多い。 これは並行して学ぶ高校数学と同期(学習のタイミング)がとれていないため致 し方ないかもしれない。しかしながら、発展的内容として微分方程式としての運動 方程式の解法を積極的に取り入れている教科書も多くなり、理解が進んだ生徒には 好奇心をそそられる工夫も増してきたように思われる。 b.熱 この分野は、熱力学ともいわれる。特に高度な数学は必要としないが、熱力学の 第1法則として熱収支のイメージ、内部エネルギーの概念の理解を要求される。熱 力学とはアプローチが異なる統計力学(大学物理専攻で学ぶ)では高度な数学も要 求される。熱力学の第2法則に関しては不可逆変化との絡みで抽象的に触れている のみで、これが大学の物理専攻で学ぶエントロピーにつながる記述は見受けられな い。 c.波 時間 t を変数とする常微分方程式であるニュートンの運動方程式とは異なり、 波動 は波動方程式で記述され、波の振幅(強度)を時間 t と場所(空間) x,y, z を変数と する偏微分方程式である。波の解は単純化すると正弦波(時間と空間座標を含む) で記述されるため、この分野は三角関数が多用される。三角関数の合成など物理現 象と絡めて指導してもよいかもしれない。 d.電気と磁気 我々が学ぶ初めての数理的な電気・磁気現象は磁化から受ける電流の力の向き とオームの法則である。前者は、フレミングの左手の法則でベクトルの外積に関連 し、またオームの法則は比例・反比例に関連する。 交流回路では、三角関数とベクトルと複素数と高校で出てくる数学が多用される。 直流では単なるスカラー(位相0)である抵抗が、交流ではインピーダンスと呼ば れ位相をもつ。これは複素数で表すと、非常に見通しがよくなる。 また、電気と磁気の変化はマクスウェルの波動方程式とよばれる偏微分方程式に より統一的に記述される。 e.原子・分子の世界 我々の目に見えない原子・分子の世界は、量子力学で記述されるが、この量子力 学が確立される以前の、古典力学を駆使したボーアの原子モデルが出てくる。さら に、物体が光速の近い速さで運動する場合に適用されるアインシュタインの相対性 理論の入り口を(特殊相対性理論)学ぶ。
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