学習数学研究紀要 創刊号(第2巻)

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- 公式を作ったことはないが、鶴亀算を何回も訓練するなら公式は便利かもしれない。何 故、公式を今まで作らなかったのか、あまり考えたことはない。我々の数学教育は公式ば かりであるが、なぜか鶴亀算には公式を使うという考え方はなかった。 4.数学教育の改革を 現在の試験では答えを選択肢の中から選ばせる方法が多い。選択方式で生徒がどのよう に考えたかということはわからない。センター試験がマークシート利用であることが問題 にもなっている。 このような方式では生徒がどのように考えたか、 途中経過はわからない。 数学の問題を解くことの訓練は、問題と同時にその解法・戦略をも与えられている。数学は 論理的思考方法を訓練するのであれば、どのような考え方をしたかを評価する必要がある。 高大接続問題が数学教育に記述式を導入することを提示してから、いろいろな方面から記 述式の重要性が示されている。数学検定協会の実施する数検での答えは記述式で行われて いる。参加する生徒はきちんと答案を書くことができるが、書くことは苦手である。これは 日常の数学教育が問題を見たら即座に答えるということを重視しているのではなかろうか。 最近、数学の重要性が指摘される。AI における数学活用、データ・サイエンスに必要な 数学、 コンピュータ普及によるテクノロー使用など、 いたるところに数学が使われるように なっている。しかし、ここで数学として指し示すことは何かを考えたい。数学の重要性とし ての数学は、 高校までに学ぶ数学知識を指すのではない。 非常に高度な数学を指すのであっ て数学の専門家の必要性を語るのかもしれない。しかし、数学の考え方ではなく、使われて いる数学の公式を必要とするのではなかろうか。 公式を覚えておけば、 どのような 2 次方程 式でも解けると同じように、 公式だけが必要な数学になるのではなかろうか。 数学の公式を 覚えて使うことは数学ではない。現在必要な数学とは、数学的思考方法であるが、この訓練 の道は遠い。 5.数学検定の在り方 問題の答えだけを求めても、 その検定受検者の考え方はわからない。 選択式では偶然に正 解を選ぶこともありうる。選択肢が 4 つあるとき正答率が 0.25(1/4)となることは、全 員が全く分からないことを表すと考えられるので、正答率だけを見ていても数学能力が身 についているかはわからない。きちんと受検者の数学的思考力を認定するためには記述式 が重要である。 実際に受検者の考えた過程を見ることによって、 数学能力を保証することが できる。この意味において答えを書くことの記述式を数学検定が重んじることは重要であ る。 今回の調査結果は正答率から不自然さを見つけた。易しいほうがは難しい問題よりも正 答率が低いという不自然さがどこから生じるのかを追いかけた結果、数学が公式の訓練に なっていることが明らかになった。 多くの答案を見ることによって、 数学教育の在り方を検 証できることは、検定を行うことの意味がある。検定は個人の能力保障だけではなく、多く
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