学習数学研究紀要 創刊号(第2巻)

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- 巻頭言 公益財団法人 日本数学検定協会 専務理事 髙田 忍
『学習』について、広辞苑には「①まなびならうこと②経験によって新しい知識・技能・ 態度・行動傾向・認知様式などを習得すること、およびそのための活動。 」という解説文が 記されています。 名は体を表すということわざにもあるとおり、名称を適切に捉えるということは大変重 要です。それでは「学習数学研究所」という名称に注目して、そこに込められた想いなどに ついて考えてみましょう。 「数学研究所」 という名称であれば、 単純に高度な数学を研究する機関ということが直感 的に理解できると思いますが、名称の先頭に「学習」ということばがつくことによって、そ の意味合いは変わってきます。そこで「学習数学研究所」の目的を見ておきましょう。 「学習数学研究所は、当協会における研究の基盤を担い、実用数学技能検定(数学検定・ 算数検定) を中心とした研究及び調査を行い、 数学の生涯学習の進歩発展に寄与することを 目的として、2016 年 2 月に設置された研究機関です。 」と、記されています。 「学習数学研究所」 では単に数学を学び習うことを研究するということだけではなく、 数 学に関する知識や技能などを習得する方法やそのための活動に至るまで大変広い領域につ いても研究していくということにつながります。特にその活動方法や活動する環境づくり はこれからの日本を考える上でとても価値のある取り組みです。 これまで、 数学については学校教育を中心に学習方法などが研究されてきました。 しかし、 これからは生涯学習という大きな枠組みの中で数学をいかにして学ぶかについて考えてい かなければなりません。そして、日本の生涯学習には検定制度がとても合っています。 当研究所の母体となる日本数学検定協会では、実用数学技能検定「数検」という検定制度 を提供していますが、毎年幼児からシニアの方まで幅広い世代の方が受検しています。 そもそも検定制度は華道や茶道といった道の精神を高めるような活動に似ています。検 定制度はよく資格制度に間違われてしまうのですが、 根本的には全く異なります。 資格制度 はある職業や企業に入るために使われるもので、 その目的はほぼ定められています。 しかし、 検定制度は自分の力を測るもので、その目的は個人個人で異なります。もちろん、大学に入 学するためだったり、企業に就職するためだったりと資格制度と同じように1つの目的で 受検する人もいますが、 検定取得を趣味としていたり、 脳の活性化のためだったりと受検の 目的はさまざまです。こうした状況に鑑みると学習数学研究所は数学を学習するすべての 人たちの活動に目を向け、 その学習環境を整備していかなければなりません。 人の数だけそ の目的は違うために、それぞれに対応した学習環境を整えていくことはとても難しいこと ではありますが、1つ1つ着実に研究していくことが大きな取り組みにつながっていくと 信じています。 数学を学習する方には是非とも多くのご意見ご要望などお寄せいただき、これからの研 究所を支えていただきますよう、心よりお願い申し上げます。
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