学習数学研究紀要 創刊号(第1巻)

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- 今回のテレビでは「世界的数学者」として権威を強調していた感じがした。 6.数学教育に残るあいまいなこと 自然科学は実験結果が重要視される。実験によって求められたことが原理になり知識となって伝承さ れていく。数学では実験ができないのでこの問題の答えは何かをなんとかして決めたい。現在の教育で はどのような答えを信頼するのであろうか。科学の立場から今回の数学の問題を見たときに、何が問題 なのか不思議に思うのではなかろうか。9か 9.0 かという問題ではなく、9.0 が正しいと思うのではな かろうか。 数学教育においていろいろあいまいな問題がある。どのように答えるかはわからないことが多い。こ のような問題をほかにも挙げてみたらいろいろと挙げることができるであろう。思いつくままに挙げて みた。 (1)交換法則が成り立つか ・単価s円で個数t個のときは s×tで交換は慣習として用いない ・面積=たて×横 のときに「横×たて」でもよい? ・定数×変数の順序で書くのが一般 (2)0で割ることの可能性 ・9÷0=0になる回答が多い (3)有効数字は数学では教えない ・3.1+5.9 は 2 桁の有効数字を扱う ・有効数字が 2 桁であれば 4.1+5.9=10 か 10.0 か? ・位どりの0の重要性(3+7=10か1 )最後の桁の0を取る教育は 3+7=1 になる ・電卓の計算結果はどこまで書くか (4)整数012は何桁の整数か (5)2 次方程式の解 x=a、x=b ・このカンマの意味は and か or か (6)1=0.99・・・ (7)0は偶数か(小学校の教科書では偶数と明記) (8)凸多角形を扱う算数教育の中で星型の形は何角形かは逃げている。 (9)正方形は長方形の中に分類されるか?(正三角形は 2 等辺三角形か) この問題は教育という立場と学問という立場のどこに立って話をするかの問題と考えられる。新しい 内容を扱う最初から正確さ、学問としての正しさの視点からのみ教育するときに、学ぶ側にとっては難 しくて理解できないであろう。そのために多くの言葉があいまいになっている。このあいまいさをどの 視点から問うかは厳密には考えられていない。今回の場合は 3.1+5.9 の答はないかという易しい問題で だれもが考えたくなった。教育的には小学校の 3 年生の教室でのやり取りを大切にすべきであった。生 徒が先生の語る事柄を信頼して受け取ることができる雰囲気をつくることが必要である。 そして、多くのことを学んだ後は学問としての正しさが要求される。その学問はその人それぞれの立 場に立つことが大切であり、すべてを一つに決めることは必要ない。これからの社会では技術 (Technology)が重要視されるであろう。その Technology が打ち出す答えに対して何が正しいかを判断
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