学習数学研究紀要 創刊号(第1巻)

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- 「3.1+5.9」についての扱い
学習数学研究所 渡辺信 要約 社会が算数・数学に興味関心を示すことは少ない。 しかし、 多くの人々が 3.1+5.9 の計算結果に関心 を示した。小学校の算数では9という答えを正しいとしてきたにもかかわらず、その後の人生経験から 9.0 が正しいと思うようになっている。今回の算数に対する話題は、子供の算数のテスト結果・成績に しか関心がないことの表れでもあるが、算数の中に含まれる曖昧さについて考えさせられた。数学検定 の結果の調査を踏まえ、この 3.1+5.9 に対する関心調査を報告する。 キーワード:算数教育 有効数字 算数の中に潜むあいまいさ 1.問題の所在 「3.1+5.9」 の答えは9か 9,0 かで社会問題になり、 ネット上を騒がせた。 この答えとして正しいのは9 か 9.0 かが、多くの意見をつけてメール上で飛び交っていた。関心があるのは 40 歳代の小学生の保護 者ではなかったかと思われる。問題の出発点は、小学校のある先生が、生徒の答案 9.0 に対して、丸を 付けなかったことに、その答案を見た保護者からの問題指摘から始まった。この計算問題の正解は何か について、テレビで取り上げたところ、正解は何かの判定が出来ず、「日本数学検定協会」なら、どのよ うに扱うかの問い合わせがこの論文の問題の発端である。 この問い合わせについて、「日本数学検定協会」では、どちらも正解とコメントを出した。このコメン トに対して、一般社会人の数学感覚では、 「算数・数学の問題の答えは唯一決まる」と考えているので、 一般社会人に対する答えには遠い感じがした。小学校の算数授業では、多くの人々は答えは9と教えら れてきていても、その後の数字の扱いにおいて、答えは 9.0 にしたいのではなかろうか。算数・数学教 育の変化の中で理解している人々にとって、答えがどちらも正解ということに対して納得性に乏しかっ た感じがした。現在の学校教育では、先生方はこの答えとして、9 と教えているので、教室での指導で は9が正解になる。小学校の教科書では 9 が正解と教科書に書いてあるので、9.0 とは教えていないと いう小学校の先生からも、9.0 として方が良いのではないかという声も聞こえてきた。また、有効数字 を考えることが重要で 9 では教育が間違っているのではないかという工学系の方からの指摘もあった。 「日本数学検定協会」の扱いについてのコメントは、小学生は 9 として学び、その後測定値として扱う 場合には 9.0 としなくては誤りとする立場など、いろいろな考え方があるので、一概に 9 とも 9.0 とも 決められないことを前提にして、どちらの答えも正解として扱っていることをコメントした。しかし、 社会では 9 か 9.0 かは、算数・数学教育にも大きな問題として解決できないままに、いろいろな考え方 があるようであった。この問題に対して、いろいろな意見を聞くために、いくつかの学会で研究発表と して取り上げてもらい、この問題についての意見を聞くことが出来た。数学検定協会として次の学会等 でこの問題について触れ、意見を求めた。
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