学習数学研究紀要 創刊号(第1巻)

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- (1)力学系数学 古典力学(ニュートン力学) 、解析力学、熱力学、制御理論の4分野と数学の関係を マトリックスにした(図表1:力学系数学 俯瞰チャート) 。 ①古典力学(ニュートン力学) 質点の力学では、微分・積分、ベクトル(解析) 、微分方程式が主であり、時間tを1変数 とする位置座標に関する微積分や常微分方程式が主である。 質点から剛体、弾性体・流体といった連続体を扱う力学になると、点としていた物体から大 きさのある物体として扱うようになるので、単なる質量が重積分で求められる慣性モーメン トにシフトする。また、3次元のベクトルで表わせた力は連続体ではテンソルに、連続体の 場を支配する方程式は偏微分方程式のナビエ・ストークスの方程式が用いられるようにな
る。
②解析力学 解析力学では変分の考えが支配的で、ハミルトン力学、 ラグランジュ力学といった、偏微 分(方程式)が主に使われ、正準変換、ルジャンドル変換も出てくる。 ③熱力学 熱力学では、熱的なマクロな現象をマクロ的手法で解明するため、それほど高度な数学は 出てこない。ただ、エントロピーなどやや(抽象的かつ哲学的)概念ともいえる状態変数と 熱力学的変数において、ルジャンドル変換や偏微分、全微分、完全微分と関連してくる。熱 力学と異なり、熱的なマクロな現象をミクロな視点(統計的)手法で探るのが統計力学であ り、この分野の調査を継続させたい。 ④制御理論 制御理論に関しては、古典制御と現代制御に大きく二分され、古典制御理論ではシステム の入力と出力だけに注目したラプラス変換よる機械的な計算が主であるが、 現代制御理論では、システムの入力と出力だけでなく、システムの内部状態も変数にした行 列(線形代数)を含んだ状態方程式を扱い、数学的にも高度かつ複雑になる。さらにシステ ムの安定性基準に関して行列演算や最適理論など高度な数学的理論が出てくる。 (2)電気系数学 直流(定常電流) 、交流と交流理論、電気と磁気(電磁気学)の3分野と数学の関係を調査 し、マトリックスにした(図表2:電気系数学 俯瞰チャート) 。 ①直流(定常電流) 直流(定常電流)はオームの法則、その拡張版であるキルヒホッフの法則が主で、大方中 学数学で理解できる内容であるが、連立方程式で解く計算では線形代数を知っていた方がベ ターな場合もある。 ②交流と交流理論 交流と交流理論では、 三角関数、 ベクトル、 複素数といった高校数学が必要になってくる。
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