学習数学研究紀要 創刊号(第1巻)

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- 析を繰り返して、 物事の判断をする」 プロセスを重視することとして示さ れている([22])。 ③ 統計教育で期待されていること ― 情報活用能力の育成 ― 上述の倉敷宣言では、「Ⅱ.教えや 学びの改善 ・ 向上策」を取りまとめた 中で、二つの必要性、すなわち、 「技 術革新の悪用の可能性や様々な性質 のオンライン情報の氾濫にも対処す るため、我々は、子供や若者が情報 の質や情報源を見分けるために必要なメディアや情報に関する能力を身に付けさせる必要性」 と「若者に影響力が大きいソーシャルメディアに関して、オンラインでの健全な社会的交流を 行い、虚偽の情報と現実を区別し、事実と単なる意見をしっかり見極めることができるように なるための教育や指導」の必要性への認識があった(下線引用者)。いずれも、情報の賢い受信者 の育成を視野に入れている。もちろん、情報の発信者としてのモラルの育成にも通底する視野 とも言える。すなわち、元号が昭和から平成に変わる頃、社会の情報化の進展を視野に入れ、 それまでの用語「情報処理能力」は当時の臨時教育審議会(内閣直属)により、情報の創造と情報 モラルの視点を加えた「情報活用能力」に発展的解消されることとなった。したがって、今回の 統計教育の充実の背景には情報活用能力を統計の面で一層強化するねらいがあるとみてよい
([23])。
上述のことを前提として、統計教育に期待することを課題として整理し、次の6項目にまと める。 ア 「人間ならではの強み」を認識し、それに依拠した教育の文脈に明確に位置づけること。 イ 情報の賢い受信者と情報を創出する豊かな送信者の育成の両面を視野に入れること。 ウ 統計的な問題解決の過程「問題-計画-データ-分析-結論」(PPDAC)の意味と必要性の 理解及びその遂行に重点を置くこと。 エ 数学的活動を遂行できる資質・能力を育成する文脈で、数学的活動の過程や成果について 多面的に考察したり、それらの妥当性について批判的に考察したりすることを重視してい る。これらが、③の統計的な問題解決の過程の文脈でも反映されること。 オ 統計に関する知識・技能は最小限にとどめ、習得した知識・技能を問題解決の過程で使い こなすことに重点を置くこと。 カ 統計的な問題解決の過程、 とりわけ、 「問題」及び「結論」の部分での問題設定や解釈では他 教科や児童のかかわる合科的、教科横断的な諸活動との関連に配慮すること。 3.プログラミング教育への対応 「世界に誇る日本の小学校教育の強みを生かしつつ、次世代に必要な資質・能力を、学校と地
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