学習数学研究紀要 創刊号(第1巻)

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- 的、協働的に解決すること」として、問題発見・問題解決の視点から分析的に整理し、その典型 として日常生活や社会の事象からのものと、数学の事象からのものの二つを例示している。こ れを基に、「次期」における算数科の〔数学的活動〕の例示は「現行」の数学科の例示とそろえ
([17])、発達段階に配慮して典型的な活動を抽出して示しており、算数科と数学科の接続が滑
らかになっている。 ところで、 「総括的定義」(H20 改訂時)の要点は、 「目的意識をもって主体的に取り組む」ことと 「数学にかかわりのある」ことである。 前者は、「次期」における「自立的、 協働的な問題発見とそ の解決に主体的に取り組むこ」とに、後者は「主体的・対話的で深い学びの実現における深い学 び」にそれぞれ連なるものと言える。もちろん、数学に関わることは、単なる知識や技能、いわ ゆる事実知にとどまらない。それらを創る数学的探究の過程で必要な知識や技能、いわゆる方 法知、それを遂行するために必要な諸能力、数学的探究を促し粘り強い遂行を支える意志や態 度など、育成を目指す資質・能力に関わることの全体に及ぶものと捉えるべきである。 (2) 学習指導要領上の数学的活動の位置づけ ① 算数的活動と数学的活動の数学的活動による統合とその三つの側面 「次期」では算数的活動は数学的活動に統合され、小中高で共通に数学的活動を用いることと なっている。それは、算数的活動も先人の英知の結晶としての数学を素材として展開している からであり、ほぼ同趣旨で、これまでも算数科では、教科目標を構成する要素や観点別学習状 況の評価の観点として「算数的な考え方」ではなくて「数学的な考え方」が用いられてきた。 また、 「現行」の英訳(仮訳)において、いずれも‘mathematical activities’とされていることなどに よると思われる([13])。 ところで、「現行」の解説数学編では、次のように述べ、数学的活動には三つの側面があるこ とを既に明示している([17]、下線引用者)。 数学的活動は,数学を学ぶための方法であるとともに,数学的活動をすること自体を学 ぶという意味で内容でもある。また,その後の学習や日常生活などにおいて,数学的活動 を生かすことができるようにすることを目指しているという意味で,数学的活動は数学を 学ぶ目的でもある。 つまり、数学的活動は教育の方法、内容及び目標の三つの側面をもつとしている。このこと が、 「次期」では学習指導要領解説算数編、 数学編で一貫し、 一層明確に示されることとなった。 ② 教育の方法としての位置づけ 上述のように、「数学的活動を通して」との文言が教科目標の総括目標及び各学年・各領域の 指導事項のリード文に明示され、算数科では「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」の3の冒 頭で「数学的活動は、基礎的・基本的な知識及び技能を確実に身に付けたり、思考力、判断力、 表現力等を高めたり、算数を学ぶことの楽しさや意義を実感したりするために、重要な役割を 果たす」とし、教育の方法としての役割を総括している。 ③ 教育の内容としての位置づけ 「次期」での数学的活動の教育の内容としての位置づけの記述では、上述のように、「現行」に
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