世界で活躍できる人材の育成・輩出をめざし
「数学好き」を増やす活動を継続する

  • 中学校
  • 猪苗代町立猪苗代中学校(福島県) 
    お話:斉藤知暉教諭

2001年から導入した数学検定実施の成果

2001年から導入した数学検定実施の成果本校は、猪苗代町の南西に位置し、町のシンボルである磐梯山と猪苗代湖に囲まれています。ほとんどの生徒がスキーに親しみ、活気に満ちた学校生活を送っています。

近年、数学に限らず、各種検定の需要が高まってきているように感じていますが、本校が数学検定(以下、数検)を導入したのは、20年あまり前の2001年2月からです。数学が苦手だと答える生徒が多く、それが如実に反映されるかたちで、他の検定と比較しても数検の受検者数が少ない状況にありました。

私は本校に赴任して2020年で3年めとなりますが、数学を好きになるきっかけは、「解けた!」というプラスの経験であると考えています。したがって、生徒たちには進学に生かすのはもちろんのこと、1問でも1回でも多く「解けた!」という経験をしてもらいたいという思いがあり、数検担当になった2年前から実施回数を増やすことにしました。その成果も少しずつ出てきており、2018年度の受検者数が8人だったのが、2019年度は23人、2020年度は33人と受検者数は増加傾向にあります。

生徒から問われた「数学って将来、役に立ちますか?」の真意

生徒から問われた「数学って将来、役に立ちますか?」の真意生徒たちには、「数学」という学問をとおして「論理的思考力」を身につけさせたいと考えています。急速に発展していく社会では、すぐに答えが見つからない問題に直面することがあるかもしれません。どうしたら解決できるのか、その答えに到達するためには、筋道を立てて物事を考える必要があると思っています。

時折、数学に対して苦手意識のある生徒から、「今学習している内容は、将来役に立ちますか?」と質問されることがあります。確かに、学習している内容のすべてが将来必要になるものとは限りません。しかし、数学で養うことができる文章の読解力や、物事を合理的・論理的に思考する力は必ず役に立つはずです。そのような質問には「社会や生活のこんな部分に生きているんだよ」とか「将来なりたいと言っていた職業では、数学の知識がこうやって使われているんだよ」と、具体的に説明することを心がけています。身近な事例を示すことで「なるほど、それならがんばってみよう」と納得し、前向きに取り組む姿勢が見られます。

その他にも、数学を学習するメリットを生徒が実感できるように、普段の授業のなかでもくふうを凝らしています。与えるヒントを最小限に留め、生徒たちで話し合わせ、解決させる活動などがその一例です。

時には、理解を深めるためにあえて「1人だとギリギリ解けない」レベルの問題を出すこともあります。いろいろなくふうの結果、わからないけどできたところまで説明してみたり、得たヒントをもとに解けるところまで進めてみたりする生徒が増えたように感じています。友達と話し合ってひらめいた時や、自力で解けた時の生徒の輝く笑顔は忘れることができません。解決が困難な課題に対しても、粘り強く取り組むその経験が「数学好き」への第一歩だと思っています。まさに、これこそが本校の教育目標でもある「忍耐」(猪苗代出身である野口英世博士の遺訓)です。

コロナ禍のオンライン授業で見えた意外なメリット

2020年は新型コロナウイルスの影響で、5月から約1か月の休校を余儀なくされました。その間、オンライン授業などは実施しましたが、学校再開後は進度に重点が置かれ、問題演習が十分に行えていない状況にあります。その点、数検の実施は、問題に少しでも触れるという観点から、一部の生徒にはなりますが、役立てることができているように感じます。数学は、定着させるためには反復練習が必要不可欠な教科だと考えています。そのため、数検の受検をとおしてたくさんの問題を解き、そこで得た知識を授業やテストで発揮できるようにしていきたいと思っています。

一方、オンライン授業は今まで見えなかった側面に、光が当たった貴重な経験にもなりました。普段の対面式の授業だと遠慮して質問できなかった生徒が、チャットを使って発言し、授業終了後にもメールで質問を送ってくれたのです。このような環境の変化が、この先も生徒の新たな可能性を広げる一助になり得るのだと思います。

本校は、2年後の2022年に学校の統合が決まっており、新校舎の建築などが進められています。学校が変わることにより、生徒の学習環境も大きく変わることと思います。

また前述のとおり、今後さまざまな技術が発達し、社会情勢も大きく変化していきます。その中で大切になるのは、学習指導要領に示されている「生きて働く『知識・技能』」「未知の状況にも対応できる『思考力・判断力・表現力等』」「学びを人生や社会に生かそうとする『学びに向かう力・人間性等』」だと思います。これらの力は、生涯揺らぐことのない財産となりますので、基本を忘れず指導の継続に努めます。そして、日本や世界で活躍できる人材を育成し、輩出することを目標として、これからもさまざまな授業実践や数検をとおして、「数学好き」を増やす活動を続けていきたいと思います。