地域学校協働活動における検定の運営実施~スクール・コミュニティ推進のなかで~
- コミュニティ・スクール
- おおさわ学園 地域学校協働本部(東京都)
お話:SC推進員 倉田清子さま、藤橋初美さま
東京都三鷹市は、すべての市立小・中学校がコミュニティ・スクールであり、さらに小・中一貫教育校「学園」として地域との連携を深めています。学校や地域との幅広いつながり「スクール・コミュニティ」の発展を目指す同市の取り組みの中から、本記事では「おおさわ学園」での実用数学技能検定(数検)の運営事例を通して、学校と地域をつなぐ推進員の活動を紹介します。
おおさわ学園 地域学校協働本部(おおさぽ)での私たちの活動
三鷹市の公立小・中学校は、すべての学校が学校運営協議会を置く「コミュニティ・スクール」です。さらに、7つの全中学校区で小・中一貫教育校の「学園」の体制が敷かれ、学園ごとにコミュニティ・スクール委員会(以下、CS委員会)が活動しています。市では、「コミュニティ・スクールを基盤とした小・中一貫教育」を掲げ、学園ごとにそれぞれ特色ある取り組みがこれまで長きにわたって実践されてきました。こうした取り組みを積み重ねてきた結果、学校や子どもたちを「縁(きっかけ)」とした地域との幅広いつながりを意味する、「スクール・コミュニティ」が着実に発展してきたと伺っています。今後は、住民協議会などの特定のコミュニティのみならず、防災やスポーツなどのテーマを「縁」としたコミュニティも通じて、広く多様な主体と結びつくと同時に、「学校3部制」構想(※1)にもとづいたスクール・コミュニティのさらなる発展も期待されています。
こうしたなか、私たちスクール・コミュニティ推進員(以下、SC推進員※2)は、CS委員会のさらなる充実に向けて、「地域学校協働本部機能の強化」の一環として、地域の関係機関とさらに連携を深め、組織の整備に力を入れています。
私たちが活動するおおさわ学園(大沢台小学校、羽沢小学校、第七中学校)は、小・中一貫教育校として、2008年に開園しました。学園の教育目標として「地域を愛し、自らの夢に向かって主体的に学び、心身ともにたくましい、国際性豊かな児童生徒を育成する」を掲げています。学園周辺には、豊かな自然環境のほか、国立天文台、ICU(国際基督教大学)などの学術研究機関も存在することから、これらの地域資源を活用した学びを体験できる機会も数多く用意されています。数検は、2015年から導入を開始しました。当初は中学校の生徒のみを対象としていましたが、現在は小学校の児童にも対象を拡大しました。2025年は8月に実施し、児童生徒合わせて69人がチャレンジしました。今後は、学園の児童生徒以外にも、地域住民の方も対象とした数検の実施も検討を進めています。
「サポート隊」(※3)と連携した検定の運営実施、教員の負担軽減も
検定の運営実施にあたっては、私たち地域学校協働本部が事務局の主体として活動し、学園内の全児童生徒に向けた検定の通知文の配布や、申し込みの取りまとめ、集金など、一連の事務作業を引き受けています。また、「サポート隊」(※3)の力も大きく、検定日当日の監督業務を率先して遂行していただくなど、こうした取り組みにより、教員の負担軽減にも大きく寄与していると感じています。
もう1つ大きな特徴として、英検・漢検は学校を検定会場としているのに対し、数検だけは唯一、近隣の大沢コミュニティ・センターを検定会場としています。これには、地域住民のために開かれた施設であることを受検者や保護者に知ってもらうねらいがあり、運営元の大沢住民協議会もコミュニティ・センターを利用して数検を実施することについては、多大なご理解を寄せてくださっています。
私たちは、「活動が根付くには時間がかかるが、まずは自分たちが楽しみながら、できることからコツコツと積み重ねていくことが大切」だと考えています。推進員としては、放課後の空き教室などを活用した学習支援の場である「みたか地域未来塾」のコーディネート役も担っています。さらに、推進員とは別に「地域子どもクラブ事業」にも取り組み、「関係者と協働でさまざまなプログラムを提供し、子どもたちにとっての楽しい居場所づくりに積極的に貢献していきたい」と考えております。
※1 「学校3部制」構想=地域の共有地(コモンズ)としての学校をめざし、学校施設を機能転換することで、学校教育の場(第1部)、多様で豊かな体験・経験ができる放課後の場(第2部)、夜間や休日の生涯学習・スポーツ・地域活動などの場(第3部)の3機能での活用に向けて検討している。
※2 SC推進員=スクール・コミュニティの発展と地域ぐるみの教育実現をめざすべく、三鷹市教育委員会から委嘱された、学校と地域をつなぐコーディネーター役。2018年度に「コミュニティ・スクール推進委員」の名称で一部の学園で活動を開始。2020年度から現在の名称に改正され、全7学園に配置されている。社会教育法にもとづく地域学校協働活動推進員。
※3 サポート隊=おおさわ学園内での保護者や学園に関係する地域の方で構成された組織で、登録者数は500人を超える。教員からの要請を受け、算数などの授業サポート、校外体験学習の安全管理、部活動のサポートなどを行い、スムーズな学習活動が行えるよう、多方面からの補助を行っている。三鷹市内のほかの学園にも同様の組織があり、学園ごとにそれぞれ名称が異なる。