学習数学研究紀要 創刊号(第2巻)

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- 数検答案から見た数学教育の問題点
-公式に頼る数学教育から数学を楽しむ数学検定へ- 日本数学検定協会 渡辺信 要約 数学検定の 3 級 1 次には方程式を解く問題がある。この中で 2 次方程式の解法について 不思議な結果が出ている。易しいと思われる問題のほうの正答率が低い。この結果は最近 の特徴ではなく、前からおかしいと思われていたことである。今回、授業参観の機会が与 えられ、公式に頼る数学教育を見ることができた。会の公式を使えばどのような 2 次方程 式も解けることを前提とし、公式の活用の訓練の教育が行われている。数学を楽しむ学習 の方向へと授業改善が望まれる。 キーワード:公式活用の数学教育 2次方程式と解の公式 正答率 数学検定 1.数検解答正解率からの不思議 数学検定の 3 級 1 次の問題の中に 2 次方程式を解く問題がある。この問題の正答率に不 思議な数値を見つけた。 中学校の段階では 2 次方程式を因数分解する方法は範囲外であり、 完全平方を作ることも難しいのかもしれない。 そうなると 2 次方程式を解くことは、 解の公 式が解法の手段になる。しかし、もっとも根本的な「2 乗したら a になる数」という数学の 意味を失っているのではないかと思われる。 問題 次の方程式を解きなさい。 (正答率) 3x2-72=0 x2-3x-5=0 53.5% 64.5
この 2 つの方程式は並んで出題されている。出題者は前の 2 次方程式のほうが易しいと 思い並べているに違いない。 しかし、 正答率からみると後半の方程式のほうがよく解けてい る。この傾向はいつも同じ結果になる。 一般には数学教育では易しいことから難しいことへという順番であり、基本から応用と 順を追って学ぶ。初めは係数は数を考えている。 x2=4 → x=±2(答えに±が付くことが強調されている) (x-1)2=3 → x-1=±√3 → x=1±√3(完全平方を作るのは難しい) x2-2x―3=0 → (x-1)2=4 → x-1=±2 → x=3、-1
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