学習数学研究紀要 創刊号(第1巻)

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- 平成 30 年 3 月
新学習指導要領が目指すこれからの算数・数学科の教育
(*)
学習数学研究所 清水 静海
要約 平成期の 30 年間に小中学校学習指導要領は4回改訂され(平成元、10、20、29 年)、成熟社 会における教育の在り方について模索が続けられてきた。平成 29 年改訂の学習指導要領にお いて、その完成形に近いものが示され、実現を目指す教育の全貌が一層的確かつ精緻に記述さ れたとみることができる。本稿では、小中学校算数・数学科の教育に視点を当て、平成 20 年 改訂と平成 29 年改訂小中学校学習指導要領を対比しながら、後者の特徴を顕在化することを 主たる目的とする。このため、①教育目標の教育内容への反映、②〔算数的活動〕と〔数学的 活動〕の位置づけにおける「ねじれ」の解消、及び③プログラミング教育の導入に焦点を当て、 ①については相互の関連性が明確にされたこと、②については「ねじれ」が解消され教育内容と しての位置付けが明確になったこと、③については中長期的な視野に立ち冷静な対応が必要で あることをそれぞれ明らかにした。
キーワード:学習指導要領、数学的活動、プログラミング教育
はじめに 小中学校の学習指導要領(告示:以下「次期」とする([1])。)が平成 29 年 3 月 31 日公示され、 平成 32 年度小学校、 同 33 年度中学校の全面実施に向け、 「次期」が実現を目指す教育を確かに、 そして豊かに展開していくことが期待されている。ここでは、小中学校の算数・数学科(以下、 小中学校の算数・数学科、小学校算数科、中学校数学科を、それぞれ算数・数学科、算数科、数 学科とする。)に視点をおいて、「次期」の特徴を整理し、併せて理論的研究、実践的研究への期 待を述べる。 中央教育審議会(以下、中教審とする。)教育課程部会教育課程企画特別部会で小中高校の算 数・数学科の改善の基本的方向や見直しの視点が整理され([2])、答申([3])を踏まえて「次期」 は作成された。改善の基本的方向では「算数・数学を学習する楽しさや学習する意義の実感」と 「数学のよさの認識」が強調され、見直しの視点としては、「育成すべき資質・能力の明確化」と 「算数的活動・数学的活動の充実」、 「統計的な内容等の改善」(以上、小・中・高共通)及び「選択
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