地域全体で児童・生徒の学力向上をサポート

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  • 早島町教育委員会(岡山県) 
    お話:学校教育課 野田久美子さま

岡山県・早島町は、県南中央部に位置する自然豊かな町で、岡山市と倉敷市に四方を囲まれ、ベッドタウンとしても発展を続けています。1人ひとりが輝く「教育のまち・はやしま」を謳い、子どもと地域の連携を深めながら、多様な学習機会の提供を実現すべく特色ある取り組みを展開している、早島町教育委員会の事例を紹介します。

「はやしま塾」で学習意欲を高める

「はやしま塾」で学習意欲を高める「はやしま塾」は、算数分野の学力向上を目的として発足した「放課後さんすう教室」が前身で、早島町教育委員会が創設し、2016年度から本格的な実施をしています。
地域の子どもたちの基礎学力の定着・応用力の向上を目標に掲げたこの活動は、各自の理解度や習熟度ごとにコースを設け、個々に寄り添った指導に努めています。指導者として重要な役割を担うのは、地域在住の退職教員や地域ボランティア、教師をめざす大学生ボランティア、学習支援員や学習指導員の方々です。2020年度は、はやしま塾OBの高校生もボランティアとして参加してくれました。子どもたちの笑顔と未来のためにサポートを続けてくださっている方々のおかげで、ESD(持続可能な開発のための教育)の観点からも、地域の高校生や大人との交流の機会が増え、「早島愛」が育ってきていることを肌で感じています。

数学検定・算数検定は、この活動の学習成果を測る目的で2019年から導入しています。当初は30人弱だった受検者数は、2020年8月の検定では56人に増え、子どもたちの意欲が数字となって表れました。合格率も80%前後と高く、目標に向かって取り組む姿勢が喜ばしい結果をもたらしました。子どもたちや保護者から「検定が町内で受検できるのはとても助かるし、やりがいがある」といった声が寄せられています。

小学生対象の「さんすう体感プログラム」また、2019年度、公益財団法人日本数学検定協会に実施を依頼した小学生対象の「さんすう体感プログラム」がよい刺激となり、保護者からも「嫌いだった算数に興味をもつようになった」とのうれしい声が届きました。算数・数学は実生活に役立つものだと実感した児童が多かったようです。
※子どもたちに算数・数学の大切さや学ぶ楽しさを味わってもらうために、「速さ」「図形」「長さ」「分類」など、算数に関わるさまざまな分野の学習を、体を使って学ぶプログラムです。

学習イベントを多数開催

「わくわくサマーホリデースペシャル子ども教室」

ESDを視野に入れた活動を夏休み期間に開催するなど、子どもたちの活躍の場づくりを積極的に行い、子どもたちの早島愛を育てています。用水路で魚の生態を調べ「はやしま水族館」を作ったり、留学生と世界の料理を作ったり、アニメーションの制作や古代体験で火おこしや勾玉づくりを行うなど、興味関心を高める体験活動は、多くの児童に親しまれ、毎年100人以上の児童が参加しています。

「算数ロゲイニング

早島の名所や史跡をめぐる地域探検と、歴史に鑑みた算数の問題を融合させた算数ロゲイニングも、児童に大人気です。算数の問題を解いて、答え合わせの際には歓声が沸き、大いに盛り上がりました。
※山野に設置されたチェックポイントを、制限時間内にできるだけ多くまわり、得られた点数を競う野外オリエンテーションのことです。

こうした活動は、身近なものの「量感」を児童に理解してもらうために、事前に自分の手や足の長さ、背の高さなどを測っておき、「自分のものさし」として基準にすることで、「量感」をつかむ助けになったようです。身体で長さが測れるという新しい発見と達成感であふれる笑顔は、今思い出してもうれしくなります。学習には、「体感する」ことが必要不可欠です。継続を通じて、参加者が「自分のものさし」を意識できるのではと、大いに期待しています。

教育委員会と地域との取り組み

最後に、地域学校協働活動・ESDに関しても紹介します。地域課題について子どもと大人が意見交換をする「熟議」、幼小中の子どもたちが持続可能な町づくりに向けて自らの考えを提案する「子ども議会」、学校内や園内でESDの視点で探究してきたことを町民に発信する 「はやしま子どもフォーラム」など、社会の一員として提案・発信する場を設けています。

地域学校協働活動については、「はやしま学園運営協議会」の中に学校支援部会・地域支援部会・家庭支援部会の3部会を設け、各部会での取り組みを「はやしま学協働本部」の活動に反映し「協働・協学・協育」の町づくりをめざしています。PTAの方もボランティアの方もたいへん協力的で、学校応援団がどんどん増えており、深く感謝しています。

「早島」という地域を挙げて子どもたちを大切に育て、今後の社会を生き抜く彼らにとって、心に残る経験を1つでも多く提供し続けたいと考えています。そして、1人ひとりが、よりよい地域づくりの一翼を担っていることを誇りに感じ、持続可能な社会づくりに貢献できる人材が育っていくことを期待しています。

早島教育委員会 徳山順子教育長からのメッセージ

早島教育委員会 徳山順子教育長早島町学校教育ビジョンでは、めざす子ども像「地域とつながり 未来を拓く 早島っ子の育成」を踏まえて、自立・共生・郷土早島を愛する心の育つ学校園をめざし、①保幼小中と連携強化した一貫教育の推進、②町民とともに学び、地域を考える「はやしま学」の実施、③学校園と地域が連携して早島っ子を育てるしくみの拡充に取り組んでいます。

「喜んで登校・満足して下校、行きたい・行かせたい学校園」をめざして、15歳の春を見据えた持続可能な教育の実現に向けて、学校園・地域・行政が一体となって、「夢の宝島プロジェクト」に取り組んでいます。とくに、学校園では、SDGsの地域課題を踏まえて、ESDとキャリア教育の視点から、身に付けたい力を明確にしたカリキュラムを構築し、小1から中3まで段階的に取り組んでいます。W型探究学習の充実を図ることで、自分の生き方を見つめ、内面に向かえばキャリア教育であり、地域社会に向かえばESDにつながると考えており、夢や志をもち、社会貢献のできる児童生徒の育成をめざしています。昨年2019年度は、小学6年生で地域フィールドワークを実施して、早島のよさや魅力、未来に残したいことなどをメッセージにした「早島ふるさとソング~世界でただ1つだけの町~」を作成し地域に披露したり、中学2年生では2018年度から起業体験としてプロジェクトチームを作り商品の企画書を作成し、プレゼンテーションを通して相互評価・外部評価を繰り返しながら、地元企業と連携して商品開発や販売体験を行っています。また、伝統文化の花ござとスポーツとを融合させた「花ござピンポン世界大会」では中高生が中心となり、地域の活性化に取り組んでいます。どの活動もグローカル(Glocal)な視点で取り組んでおり、子どもたちの成長には目を見張るものがあります。

今年度から実施している、小学校高学年の教科担任制は児童・保護者からも好評であり、現在、一貫教育のさらなる充実に向けて、義務教育学校の設置を踏まえて、施設部会とカリキュラム部会を立ち上げ検討を重ねているところです。ICT教育については、タブレットを文房具の1つとして活用できるよう、各教科でICTを活用した授業づくりを着々と進めるとともに、自学自習のできるタブレットドリルの活用や家庭でのオンライン学習も進めており、未来の教室に夢が膨らんでいきます。そのなかで、理数教育と英語教育の充実は必然であり、留学生とのEnglish Dayや海外とのオンライン英会話など、英語をツールとして、自分の思いや考えを伝え合える教室環境や理数を実生活と結びづけた教育の充実に取り組んでいきたいと考えています。

こうしたさまざまな活動を通して、早島に赴任した先生方にとって、学びの多い、指導力を高める町になればと願っています。教員研修の充実はもちろんのこと、学校教育ビジョン推進委員会の4部会(まなび部会、ESD部会、こころ部会、からだ部会)の充実など、保幼小中の教員が一体となって改善に取り組むことで、地域の教育力を高め、早島で学んでよかったと思える子どもたちが育っていくのだと思います。

吉備の穴海だった早島の地で、何度も津波に流されながらも、未来の早島のために杭を打ち続けた先人達のフロンティア精神に思いを馳せるとき、今の子どもたちだけでなく、未来の子どもたちのためにも教育長として何ができるのかを考えながら、新たな夢に向かって、さらなる挑戦を続けていきたいと考えています。