ヒートウェーブITアカデミー

職業訓練のなかでのデータサイエンス数学ストラテジストの活用
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ヒートウェーブ株式会社が運営するヒートウェーブITアカデミーは、ITスクール事業や企業向けIT研修、就職支援に取り組んでいます。さらに、各種委託訓練を含む職業訓練も実施し、求職者のスキルアップを支援してきました。今回は、データサイエンス基礎理論を担当する大住真理子講師に、「データサイエンス数学ストラテジスト中級」(MDSS中級)に着目した経緯や、データサイエンスを学ぶうえでの数学の重要性について話を伺いました。

導入背景

「OAソフト管理科」、「マルチに活躍する事務×データ分析× DX科」での受験できる関連資格として、MDSS中級を選んだ経緯について教えてください。

まず、義務教育段階における算数・数学の基本的な内容が多く含まれることが挙げられます。両コースの訓練では、あらかじめ用意されたデータからグラフを作成する手順について、オフィスソフトの操作演習で学ぶ場面があります。ここでは、グラフの種類や表し方、特徴を理解したうえで、目的に合わせた最適なグラフを作成するスキルを習得し、ビジネスの現場で活用できるような資質の育成をめざしています。さらに、ITパスポート試験の内容を学習することからも、算数・数学に関しては、「用語についての知識だけはある」という段階からの脱却が鍵となるため、実務面で具体的にどのように生かせるかが重要視されます。また、現在のITパスポート試験では「DX、IoT、AI、機械学習」といった最近話題のテーマや統計に関する基本的な知識の理解も問われるため、これらのテーマに関心を持ってもらい、意欲的に学習してもらうことが、まず第一に大切だと考えました。これらのテーマは、MDSS中級でも一部扱っており、内容的にも取り組みやすいことに加え、バランスよく網羅されていることから、さまざまな側面から統計の基礎に触れることができ、理解を深められるという効果も考え、採択に至りました。

期待できること

MDSS中級試験に関する学習を通じて、期待できることなどがあれば教えてください。

データサイエンスを学ぼうと思っても、算数・数学の基本的な知識がないとツールの使い方をなぞらえるだけになってしまいます。ものごとの本質を見極めるという側面からは、こうした学習は、たいへん重要な役割を担うものだと考えます。また、数学への抵抗感の解消や論理的思考力の強化、答えを導き出すまでじっくり考え、取り組む姿勢を育成することにも効果があるのではないでしょうか。わからなければ、自分で調べるといった主体性(その場しのぎで、まわりに答えを聞いて完結させるような姿勢の撲滅)、場合分けをして問題文の条件を整理するといった問題解決能力の向上なども期待できます。こうしたことを積み重ねることにより、具体的な数値にもとづいて、規則性やパターンを見出すことができないかなど、発展的な思考力の育成にもつながっていくのではないかと思います。

指導で力を入れていること

職業訓練を実施するなか、算数・数学に関する指導で力を入れていることがあれば教えてください。

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社会人の方が算数・数学を学び直す際、「ビジネスでどのように役立つのか」ということに終始するあまり、本来学習すべき内容が見えなくなってしまうケースもあります。まずは基本に立ち返り、粘り強く取り組む姿勢が大切だということを伝えるため、問題文の条件の整理、最後まで読み通す力など、とくに国語力や読解力の強化に力を入れています。数値だけを見て、前提となる条件を無視してはならない、文章の意味が把握しにくいときには、図を用いて表現したり、自分自身で試行錯誤していくことが問題解決への手がかりになることがある、といったところも指導しています。解答までに長い解説を要する問題の場合、途中であきらめてしまい、考えることを放棄してしまうケースもしばしば散見されます。国語力や読解力を身につけたうえで、考え続けることの楽しさを知ってほしいと思います。

また、論理的思考が身につくことにより、課題の認識、解決手法のパターン分け、それらを人に伝えるコミュニケーション力の育成などにもよい効果を与えるということにも気づいてほしいところです。

人材育成について

めざす人材像として、「DX による時代の変化に適応した人材」とありますが、訓練カリキュラムを通じて、具体的にどのような人材が育成されることを期待していますか。

未知のものや環境の変化に対して柔軟な思考力で対応し、適応できる人材が育成されることを期待しています。

訓練カリキュラムの内容は、実務ですぐに役立つものでもあり、即戦力としてビジネスに貢献できるものになっています。それと同時に、訓練を通じて身につけたITに対する学習の取り組みかたは、今後も応用できるものです。これから先も時代はつねに変化し、新しい分野の学習が必要となるケースもあるでしょう。そのような際にも、これまでどう学習してきたかが参考になるはずです。学習への手助けとして資格試験の紹介や対策授業も取り入れていますが、今後どのように資格や書籍を活用すればよいのかといった、最適ルートについても伝えています。そのため、受講生自身が将来の理想像を描いたときに、これから先、どのように学習していけばよいのか、検討しやすいようなしくみも構築しています。

(取材・文/上林航)